CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU 解説
by SAKURAnoG
Written by Bob Crewe, Bob Gaudio
Originally performed by Frankie Valli
Covered by Boys Town Gang
Also covered by Little Glee Monster
目次
1.どうしてタイトルには「Of」がないのか?
2.「WOULD」が隠す仮定の「IF」とは?
3.「もう時間がない」というときの「もう」は何というか?
4.「WHEN」は「~する時」か? 千変万化の「WHEN」
皆さん、こんにちは。 今回は、Frankie Valliの「Can’t Take My Eyes Off You」について語っていきたいと思います。リトグリもBoys Town Gangのカバーバージョンをベースに2016年夏、ガオフェス2016の中のメドレーの一つとして披露しています。
また、同年9月、大阪MBSの「ちちんぷいぷい」に出演、この歌を歌っています。赤を基調にブラックを重ねた衣装、ヤマヒロさんの司会で「もうすぐ夏休み終わるけど、課題とかどうしてんの?」とか「来年1月の(初)武道館が、ねぇ(楽しみですね)」といった会話が交わされています。まだ、ヘッドホンを付けていた頃6人体制でのカバーです。懐かしいですね。
この曲は、もともと1967年Frankie Valliのシングルとしてリリースされ、米国Billboard Hot 100で2位に上り詰める等大ヒットし、その後数々のアーティストにカバーされました。中でも1982年Boys Town Gangのダンスアレンジ・バージョンは、日本をはじめ、世界中でヒットしました。
歌詞は、Lyrics.comを基本としましたが、YouTubeにあがっているBoys Town GangのMV画像に基づき、異なる箇所を実際の歌唱に合わせて修正しました。一番大きな修正箇所は、この楽曲のタイトルにもなっている「Can’t take my eyes off you」の部分です。Lyrics.comでは、歌詞は「off you」となっていますが、「off of you」と「of」を追加しました。詳細は下記コメントをご覧ください。
1.どうしてタイトルには「Of」がないのか?
画像を見ると、Frankie Valli は歌詞の部分もタイトル通り「Can’t take my eyes off you」と歌っていますが、その後いろんなアーティストがカバーしていく中で、「off of you」と歌う方が主流となっていったようです。Off of もoff単独も「~から離れて」といった同じ意味なのですが、特に米国では「off of」と言うようで、カバーするアーティストやリスナーが単独のoffに違和感を覚えてofを付けて歌唱したのではないかと思われます。ただし、タイトルだけは変えるわけにいかないので、そのまま「OFF YOU」とせざるを得ず、結果、タイトルと歌詞で食い違いができてしまったのではないかと。タイトルから「of」が落ちたのではなく、歌詞に「of」を追加したというのが実態だと思われます。これについては、次の歌詞解説でもう一度ふれます。
それでは、歌詞の解説に移りましょう。
☆「押韻」押韻箇所をアンダーラインで示してあります。ほとんどすべての行で、きれいに韻を踏んでいますね。
☆「Can’t take my eyes off of you」
曲のタイトル「~Off You」と歌詞「off of you」が異なっているということと、その経緯は述べましたが、何と!カバー曲の中にはタイトルまで「off of you」と変えてしまったものまで出る始末。タイトルまで変えなければいけないほどのこだわりとは、一体何なんでしょうか? ひょっとしたら、「タイトルは何かの手違いでミスプリントをしたんだ」と勘違いされたんでしょうか?
今回はその謎を、深掘りしてみました。
offとofはもともと同根で、どちらも「~から離れて」という意味を持っています。辞書を見ると「off of」は前置詞「off」と同じ、と書いてあります。そして〘米略式・英非標準〙とあります(GENIUS4th【off】[off of O]P1349 )つまり、イギリスではあまり使われずに、アメリカの主に話し言葉で使われることが多い、ということですね。
オリジナルのFrankie Valliが歌っている映像がYouTubeに上がっていますが、彼は当然「take my eyes off you」と「of」なしで歌っています。おそらく歌詞もそうなっていたんだと思われます。ところが、いろんなアーティストがカバーしていくうちに(比較的早い段階で)「off of you」と歌われるようになったようなのです。
そこには、当時すでに米国では「off of」が広く使われるようになっていた、といった背景があったものと推定されます。
普通は歌詞に多少の違和感はあっても、オリジナルを尊重してそのまま歌うのですが、オリジナルの歌詞を変えてまで歌うといった衝動(?)はどこから来たのでしょうか?よっぽど違和感があったと思われます。
ここからは個人の意見ですが、要因としてはこの歌詞がたまたま「take」という動詞を使っていたことにあるのではないか、と思えます。どういうことかというと「take off」(脱ぐ、取り外す)という熟語があります。文法的には「動詞+副詞」として一体化しているものと言って良いでしょう。例を挙げると、(彼は、メガネをはずした)は、
(a) He took off his glasses. = (b) He took his glasses off. この場合、「remove」という動詞に置き換えることができます。
(c) He removed his glasses.
オリジナルの歌詞「take my eyes off you」は、これとは違って、「視線をそらす」という意味なので、「off」は前置詞です。
(d) Can’t take my eyes off you. [自分の目をあなたから(off you)取り上げる/そらす(take)] これは、「remove」では置き換えられません。
この (d) が上の「取り外す」という使い方と混同されて、『これじゃあ、言い換えれば「Can’t take off my eyes you」となって、おかしいじゃないか!「you」の前に前置詞がいるだろう。「Can’t take my eyes off of you」うん、これならいい!』と、こんな感じになったんじゃないかと想像します。
推論なので、間違っているかもしれません。単純に「今じゃあ『off』よりも『off of』のほうが普通だろう!」ということだったのかもしれません。どちらにしても、タイトルまで変えてしまうというのは、オリジナルへのリスペクトという点からも、どうかなと思います。
2.「WOULD」が隠す仮定の「IF」とは?
☆「You’d be like heaven to touch」
「You’d=You would」仮定法過去ですね。現実とは異なったことを表すときの話法になります。この「would」が曲者なんです。主節中に「would」が出てきたら、「曲者!」と警報を鳴らしてもいいかもしれません(引用が古臭い!(笑)) さてここで、仮定法というからには、仮定の「if」はどこにあるのでしょう?
蛇足ですが、『仮定法過去は「if」を伴う』という思い込みは『受動態は「by」を伴う』という考え方と同じくらいの「危険思想」になります。日常会話では、むしろ「if」や「by」がない方が圧倒的に多いのです。でも、仮定の意味がなくなったわけではありません。このフレーズのどこかに仮定の意味が隠されているんです。どこでしょうか?
答えは「to touch」です。「触ってみたら」という不定詞に仮定法過去の表現が意味上かぶさったものです。「現実には、触れることはかなわないけど、もし仮に触れることができたなら、(きっと)天にも登る気持ちだろう」という感じになります。
再び蛇足ですが、仮定法にはこのように文中の単語や句の中に仮定の意味が含まれていることがよくあります。例えば、
上記と同じく不定詞に隠れている場合:
(a) I would give anything to know where she is. (彼女の所在がわかれば何でも差し出すのだが) [実際には、所在がわからないという現実を言外に含んでいます]
副詞句に隠れている場合:
(b) That picture would look better on the other wall.(もう一方の壁にかけたほうが、引き立つだろうに)
主語に隠れている場合:
(c) I wouldn’t go. (僕だったら行かないな)[文脈により違った意味にもなります]
関係詞節に隠れている場合:
(d) A wife who really loved him would make concessions.(本当に彼を愛している奥さんなら、譲歩するだろうに)
さらには、どこにも見当たらない場合(文中に仮定のヒントがない)もあり、その場合は文脈で判断する必要があります:
(e) Take that green one. You’d be the prettiest girl in the town. (あのグリーンのにしなさいよ。[あれを着れば] 町一番の美人になるわよ。)
出典:
(a) [英文法解説改定三版第10章仮定法§177B(2)P263] 江川泰一郎 金子書房1991
(b) [同上§177A(5)P263、一部筆者改変]
(c) ―
(d) [同上§177B(3) P263]
(e) [同上§178 (1) P264]
他にも、色んな場所に隠れることができます。まるで忍者みたいですね。
解説 その2に続く ⇓