大和シティー・バレエの夏の公演、「想像×創造 vol.5」は、「雪月花」のタイトルで、3つの作品が上演でした。

 

雪は「ゆきひめ」 関直人振付の、井上バレエ団のレパートリーです。

 

 

井上博文原案の、日本舞踊とバレエの融合作品というか、むしろ日舞が主体な作品としてスタートしたらしいのですね。その手法の日本の動きが素敵で、2018年に大和の舞台で初めて見てから、とても惹かれる作品でした。ゆきひめは小野絢子さん、男は福岡雄大さん。ソリストは山田歌子さんと成田遥さんでした。

 

今年の上演は、菅井円加さんと福田圭吾さん、雪のソリストは盆子原美奈さんと古尾谷莉奈さん。福田圭吾さんは、2020年にも中原麻里さんの振付作品に出ていて、雪女の「男」はバージョン違いで2度目なんですね~。まきこまれ型山の男が似合うのでしょうか。

 

昨年の「ジゼル」に続いて、白の静のバレエの菅井円加さん。和のメイクがお似合いで、さすが資生堂協力、だったのですが、いやしかしキレイでしたねー。最前列で見ていたのですが、円加さんのお顔が一瞬、お能の女面に見えてはっとしました。心の内面は激しく動かしているのに、表に出る表情を消しているという、そういう表現が素のお顔を能面のように見せたのかも。技術があるので抑えた動きも素晴らしかったです。

 

盆子原美奈さんは、先日江戸川で、渡邊峻郁さんと踊ったオーロラが素敵だったんですが、すらりと首が長くてクールな踊りがかっこよかったです。大和のエース古尾谷さんは、全作品でメインどころを踊って大黒柱な活躍でした。

 

月は、二見一幸さん振付の「月夜に集う民の詩」 二見さんの作品は初めてです。コンテンポラリー・ダンスのオーソドックスな言語で、いきなり目を驚かすのではなく、つみ重ねていく表現が見るがわにのしかかってくるような作品でした。ベートーヴェンの例の「月光」でしめくくったのはニヒルな感じ。大和シティー・バレエのみなさん、よく訓練されていてなんでも動ける集団なのですが、若い女性で、小柄な方が多くて、表現という点で少し限界も感じました。ここから抜けて、変り者?なダンサーさんが出てくると面白くなるのかも。

 

花は、今回のメインというか、池上直子さん振付の「桜も森の満開の下」 坂口安吾の原作の「逐語訳」ともいえる、大きな作品でした。

 

満開の桜は、舞台上部から吊った美しい桜色の布で、美術は岩本三玲さん。パネルなどもよい色合いで素敵でした。生首も担当されたのでしょうか?

 

男は藤間蘭黄さん、女は本島美和さん。蘭黄さんは横断型日本舞踊家で、ルジマートフさまと「信長」を見ましたが、今回は出ずっぱりの主役で、実力を見せつけてくださったというか。驚く仕草、怖がる仕草、ちょっとしたところに、日本の舞台の伝統的な動き方を見せて、首を斬るなど、省略の仕方が歌舞伎や日本舞踊には定型のやり方がありますものね、とても効果的でした。

 

本島美和さんはですねー、今回演目だけが発表になって、配役はあとから出たのですが、もうこの作品のこの役って決定でしたよね、最初から言ってくれていいのに。絶対いいに決まってるトンデモ美女、ですが予想を超えて物凄かったのでした。男に見せる顔と本性の顔と、くるくる変わる絶妙さ。最初に登場したときの、市女笠からチラチラとのぞく顔だけでもう大成功というか。

 

悪魔的なまなざし、は演技者の表現のなかでも魅力の一瞬で、映像や舞台、いろんなジャンルで切り札なんですが、それをできる人はなかなかいなくて、ましてぴったりはまる美貌の持ち主となるとほんとに限られるのではないでしょうか。今回は玉三郎や七之助を連想しましたが、美和さまを見ていて、しかもバレリーナなんですよー、凄いことだなとしみじみしてしまいました。美和さまは新国立劇場バレエ団を退団後、舞台人としての資質がもう満開というか、とくに大和シティー・バレエでは活躍しまくりです。よかったです🥰

 

池上直子さんのストーリーテリングの巧さもやっぱりさすがでした。音楽の組み合わせとか、もうちょっと詰められるかなというところもあったのですが、素晴らしかった~。池上直子さん、今年は「Eden」と、長編を2本見られましたがどちらも満足度高かったです。

 

やっぱり楽しみいっぱいの大和シティー・バレエの公演でした🥰