貝川鐵夫さんの「人魚姫」 3つめのキャスト、柴山紗帆さん、中島瑞生さん、仲村啓さんの回を見ました。ついに、な瑞生さんの主演デビューです。

 

上演前の取材で、貝川さんが、Dance to the Future の応募作品として、瑞生さんの王子で人魚姫のパ・ド・ドゥを作ったけれど、上演されなかったと明かしていましたが、つまり瑞生さんが貝川人魚姫の王子の基本イメージということになるのでしょうか。

 

 

児玉初穂さんのブログで2018年の貝川さんのスタジオの発表会の「人魚姫」について書かれているのですが、使用曲は今回の選曲とほぼ同じ、「タイスの瞑想曲」もすでに登場しています。このときは木村優里さんの人魚姫と、奥村康祐さんの王子だったのですよね。瑞生王子には、どなたが人魚姫だったのかしら。貝川さんにとっての人魚姫は、創作上の大事なイメージのひとつなのかも。

 

紗帆さんの人魚、踊るテクニックが余裕で美しいのですが、マイムにちょっと緊張が見えたかも、いどころがずれたりしていて、そんなこんなで最後のデュエットで本領発揮というか、独自の個性がようやくはっきり見えました。あの強さで全篇の役作りをしたら、面白い人魚姫かも。もののけふうな味つけをしてもいいのではないでしょうか。

 

主役の王子としての、瑞生さんの最初の登場は、深海魚に運ばれてたゆたう場面でした。美と憂いのデビューでとても似つかわしいです。感情を丁寧にたどって、白い衣装が映えます。ジャンプが高くて美しいので、ソロの踊りもみごたえがありました。王子のデビューを見たいという方も多かったのではないでしょうか、華やかな登場に今後の期待が広がります🥰

 

仲村啓さんが深海の女王、今回一番意外だったキャスティングでしたが、これが驚愕のデビューでした。啓さん、超高速で感情を動かして表現できるタイプなんですね。顔の表情だけでなく、全身の動きにも、それこそタコの表面がゆらゆらするように女王のきまぐれ気分が蠢いていて、目が離せない面白さ。しかも男性トウシューズで、「6時のポーズ」のアラセゴンを見せてしまうのでした、シルヴィ・ギエムかと思いましたよ。ダンサーとしてだけでなく、舞台人として異能のカテゴリの逸材なのでした。ドラァグな女王さまはショーストッパーな役ですけど、それ以上な大喝采をあびていました。

 

4時半からは、木村優里・渡邊峻郁・井澤駿組の2回目の登場。優里さん峻郁さんは前の日に続いて、表現の自由も深みもまして、踊りのキレもまして、凄い舞台でした。前回の峻郁さんは、ちょっとらしくないというか、カタカタ踊っていた感じがあったのですが、本来のなめらかな動きに戻って美しかったです~ 足かえのピルエット、軽くとんで方向を変えて進んでいくシークエンスともううっとりでした。

 

優里さんは、ケガのあと、ケガの前に、謎の増量作戦をとっていた頃と、なんだか迷走?していたのですが、やっと戻ったというか、進化したというか、有無をいわせぬヒロインぶりでした。

 

タイスの瞑想曲のラストのデュエットはおふたりの間合い、スピードと大きさと高さと、妙技連発で、ですが静かなやりとりで、幽玄の世界でした、凄かったです。

 

海のなか、浜辺、町の広場と、活躍する人たちが2回目になったら舞台が大きく活気にあふれていて楽しかったです。何度も見るうちにお気に入りの場面もいくつもできました。1幕おわりの、星空のもとで男女のカップルが踊り、星がキラキラとふってくるところなど、テもなくときめいてしまうのでした☆彡