東京文化会館で、東京バレエ団の公演、ブルメイステル版「白鳥の湖」を見ました。4公演の最終日で、初主演の榊優美枝さんのオデット・オディール、王子は柄本弾さん、ロットバルトは安村圭太さん、道化が山下湧吾さん。

 

榊優美枝さんは、近年こんな驚きと喝采のデビューはなかったのではという、鮮やかな白鳥姫でした。榊さんは20代後半くらい、ケガをして1年半ほどのブランクから復帰されたタイミングだったそうです。昨年秋の「眠れる森の美女」でリラの精を踊っていて、美しくてステキだったのですが、踊りは普通な印象だったのですよね、今回はホントにびっくりしました。

 

オデット姫の登場のやわらかな腕の動きから、出会いの場面のやりとりがはっきりわかりやすくて、ポーズがなんともいいのですよね。バランス、回転の余裕があって、つま先づかいも目をひきました。アダージオでは、上げた足を戻すとき着地寸前にちょっと止めたりして、丁寧だしアクセントになってました。そういう細かいポイントもまったくブレなく見せて、王子の柄本さんとは本当によく合っていました。大柄な柄本さんに持ち上げられると、これまた目をみはるダイナミックな美しさで、まさに大白鳥が羽ばたいていましたね~。

 

すでに期待の3幕は、オディール姫がかっこよくて、目も利くし惚れ惚れでした。ブルメイステル版の白鳥、見るのは今回が初めてでしたので、黒鳥がどこから出てくるかわからなくて大変焦りました💦 フェッテは横足がきれいに出て攻撃的、一味をしたがえて、圧倒的でした。4幕も、持ち上げられた姿が生命を無くしたような形質に見えて印象的でした。

 

見てみたかったブルメイステル版の白鳥の湖なのですが、そんなに奇を衒うような展開はなくて、東京バレエ団の個性なのか、青春ぽい若々しい白鳥の湖でした。1953年初演だそうで、当時のソ連のバレエの雰囲気が伝わってきます。第1幕が踊りとしてそんなに面白くなかったり、話題の第3幕も、民族舞踊が全員ロットバルトの手下という展開はドラマティックですが、そんなに大人数で押し寄せなくてもとちょっと思ってしまいました。ですが手下のスペインやナポリのソリストが、目力カッコいい系で踊ってくれるのはいいですね~、スペインは平木菜子さんで目立つポジションで大変嬉しく見られました。4幕の展開が舞台づかいも大胆で、いちばん独自性を感じたかも。

 

チャイコフスキーの原典版を活かした音楽構成で、むかーしに初めて、パリ・オペラ座の映像で見たときはここにこんな曲?と新鮮でしたが、あれから時を経て、あらためて聞くと流れが自然。演奏はアントン・グリシャニン指揮の東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団で、これが素晴らしかったです~、久しぶりに聞くあでやかなチャイコフスキーで、忘れていたものを取り戻したようでした。どういうところが違うんだろう、フレージングとか、ちょっとしたテンポの揺らし方とかなのかしら。ハーモニーのどの声部をより響かせるかでも、印象が変わりますよね。4幕はもう、シンフォニックに鳴らしまくって壮大な空間になっていました。

 

 

齋藤友佳理監督になってロシア色を強くしている東バですが、白鳥たちのうねるような上体の動きが見ごたえありました、というか、ホームに戻った懐かしさすら感じてしまいました。民族舞踊もいい意味のくさみが出ていて見ごたえ最高でした。今、「ロシア」を謳うことはできないのですが、チャイコフスキーと白鳥の湖の魅力の原点はやはり、そこにあるのですよね。その点は複雑な気持ちでした。