シアター・オーブの公演を、4月16日水曜日のマチネで見ました。ロミオがジャクソン・フィッシュ、ジュリエットがブライオニー・ベニントン。ティボルトがアダム・ガルブレイス、マキューシオはハリー・オンドラック・ライト、バルサザーはレオナルド・マッコーキンデイル、ベンヴォーリオはアダム・デイヴィースでした。

 

「プロコフィエフのロミオとジュリエット」に基づく読み換え作品でした。お話の設定が違うので、戯曲のそれらしさはかなり薄くなっていて、前面に出て来たのは一にも二にもプロコフィエフというか、あのメロディーを、あの和音を、こう使ってこう表現しました、の連続といいましょうか。

 

見ながらずっと思っていたのが、これは元のバレエを知っている人が、音楽が本来書かれている場面と、今回の踊られ方で違う使い方になっているのとを、比較しながら見ていくのが、マシュー・ボーンのやりたかったことなのか、もしくは、そういうものとは完全に離れて、ひとつの青春のドラマとして感じとってほしいのか、どちらなのだろうかということでした。元ネタをくっつけて見る人と、そうではない人でかなり印象が違ってしまいそう。

 

録音音源だったのですが、楽器の編成はかなりいじっていたようでした。担当楽器が違っていたりで新鮮でしたが、わりとそのまま編成小さめで演奏しているところもあったり、ちょっと中途半端に感じたかなー。近未来の設定なので、全編デジタルなサウンドにしてもよかったのでは、むしろそっちで聞いてみたかったかも。

 

近未来の矯正施設という設定なので、病院ファッションでちょっと単調でした。人間ドックの途中で廊下を歩いている人たち、みたいな衣装で身体のラインがきれいに見えないし、ひっそりストレスがたまりました。いつものお洒落な衣装が見たかったです~。あと、悪の存在がティボルトひとりに集中していて、私が見たガルブレイスさんは、物理的に巨大で強い悪。説得力はあったのですが、こういうところに退廃美の黒づくめ男、とか出してくれるとよかったのにな~。

そのテの悪の華、マシュー・ボーンさんは作るの上手じゃないですか。

 

セットは2階廊下があって、扉の出入りやハシゴ段など、さすがに扱いが上手というか、移動速度が通常の4倍くらいで怖いくらい、こういうところに舞台の技術水準みたいなのが出ますよね。アクションが積み重なって、観客を惹きつけていくというか。展開のベクトルもはっきりしていて幕切れまで一気に見せます。

 

振付はノンストップの芳醇さでしたが、音楽との関係が素直というかリズム通りというか、意外な萌えみたいなのは少なかったです。ボーンさんも60代なんですよね、今最先端の世代とはダンスの感覚がちょっと違うのかも。お話はわかりやすかったですが、ワンアイデアで2幕の大作は、なにかもうひと色変化をつけてもよかったのではないでしょうか。というかやっぱり衣装が嬉しくなかったでした、そこか。