筑摩書房の新刊、恩田陸さんの「spring」 発売日は22日ということでしたが、すでに書店に出ていたので買って帰って、そのまま読み終わりました。

 

恩田さんの手掛けるバレエ小説ということで、もちろん楽しみにしていたのですが、モチベーションが一気に上がったのが、昨年の恩田陸さんと渡邊峻郁さんの対談。

 

 

恩田さん、峻郁さんの舞台に詳しい(笑) ファンみたい?に丁寧にご覧になってることがわかって、勝手に親近感を覚えてしまいました。内容的にも充実していて、とてもいい対談だと思います。ダンサーとしての峻郁さんが小説のキャラクターに反映しているかはわからないですが、主人公の指先が細くてキレイと描写されていて、そこは似ているかも。

 

「spring」は、PR誌「ちくま」に連載していたので、単行本化の前に読もうと思えば読めたのですよね。でも連載で、続きを待ちつつ読むのは辛かったかも、一気に読んで幸せな午後でした。

 

天才ダンサー萬春を、周囲の人物それぞれの視点から描いていく構成が巧みで、文字で描きにくい舞踊という芸術ですが、「蜜蜂と遠雷」で、ピアノの世界を鮮やかに見せた恩田さんですし、やっぱりさすがとしか。そして、設定された新作の数々、見てみたい舞台がいっぱいで、夢の鑑賞ツアーに行ってるみたいでした。出てくるダンサーたちも魅力的で、とくに男性ダンサーは長身美形ぞろいでとっても贅沢な気分になれました。

 

ずっと観客としてバレエを見てきましたが、そのかたちの数々について、何十年見ても飽きないのですよね、やはり人間の身体の動かしかたについて、ひとつの究極のスタイルなのかと最近思います。自分がダンサーとしてその再現を目指していたら、本当に離れられない世界なのでしょうが、その「魔」についての説得力もハンパない小説でした。主人公春くんについては、踊るだけでなく、振付家としての活躍がメインに描かれていて、そちらのモチベーションも強烈です。というか春くん忙しすぎじゃないかというのが唯一つっこみどころかも。

 

バレエファンなら必読、ダンスやパフォーマンスに親しみのない方にとってはどう捉えられるのかなとは思いますが、トップ小説家の力作は手にとってみるべきです絶対。あと、この小説で登場した、バレエ化提案物件、ほんとうに実現したらいいのにと思うのがいっぱいあって、spring発の作品、誰か企画してくれないでしょうか、いろんな方向から楽しみいっぱいな一冊でした🥰