スター・ダンサーズ・バレエ団による、デヴィッド・ビントレー作品のトリプル・ビル。そして「雪女」は新制作の世界初演作品という、企画すごいな公演を見てきました。

 

幕開けはスタダンのレパートリーとして、すでに何度も踊られている「Flowers of Forest」 スタダン初演のときも見ていますが、皆さん体格がよくなったのではないでしょうか、キルトの衣装が一段とお似合いで、踊りは音楽のアクセントを見事に拾っているし、ナンバーごとの表情も的確で迫力がありました。3人で踊ったり、パ・ド・ドゥがあらわれては消えたり、凝った構成が改めて面白かったです。ビントレーさんが1985年に作った作品。

 

休憩をはさんで、日本初演の「The Dance House」 ショスタコーヴィチの「ピアノ協奏曲第1番」をそのまま音楽として使っていて、モチーフは「死の舞踏」なのだそうです。美術はあの、ロバート・ハインデル。衣装に黒や赤のラインがくっきりひかれていて、ボブ・フォッシーの「オール・ザット・ジャズ」の、手術モードな血管ダンスをちょっと思い出しました。

 

エイズのテーマではあるのでしょう、プログラムでビントレーさんが「エンジェルス・イン・アメリカ」にも言及していますし。男性ダンサーがその災厄のイメージを担っているのですが、ベタにならない表現がビントレーさんらしいセンスでした。2楽章のデュエットを東真帆さんが踊っていて、足がやっぱりキレイ🥰 久野直哉さんと、リフトも素直じゃない展開なのを面白く見せてくれました。というか、作品自体がとても緻密で、アイデアにあふれていて、ショスタコーヴィチの音楽の読み込みぶりといい、見ごたえ抜群でした。1995年の作品だそうですが、ビントレーさん自身のエネルギーをとても感じました。

 

プログラムの最後は「雪女」。ストラヴィンスキーの「妖精の接吻」の音楽を使って、美術はディック・バード。原作はもちろん、小泉八雲です。50分の作品でした。

 

大変期待していた新作だったのですが、あらら?と思っているうちに終幕でした。フラワーズ、ダンスハウス、と、若きビントレーさんの勢いのある振付が続いたあとだと、正直この新作はまず、踊りの魅力がかなり少なかったかも、お年が影響するものでしょうか、凝ったリフトもなく、普通のクラシックのテクニック中心で動きの語彙も限られてしまったように感じました。ストラヴィンスキーの音楽を舞踊に移すという点では、やはりさすがだなと思ったのですが、前2作と比べるときらめく色彩とモノトーンの線がきくらい違ってしまいましたよね…。

 

美術はおなじみ、ディック・バードさん。日本美術への理解もハンパなく、装置のラインも美しかったです。ですが、市女笠と御祭禮の提灯が同居している世界観、やっぱり厳しいものが💦 いや文楽歌舞伎だって菅原道真と街の寺子屋がしれっと並んでいるんですが💦 紅梅のモチーフもきれいなんですけど、枝のくねくねが中国ぽいなーとか、そこまで言うと言いがかりですが💦 こどもが持って走っていた不二家のセットみたいな鯉のぼりもあれはなんじゃとか。シャーマンという役で、ドラクエみたいな人がいましたが、あれも修験者とかお坊さん系にしたらカッコいいのになーとか、よけいな感想が去来してしまって辛かったのでした。

 

日本のスタッフで作っても、某「かぐや姫」1幕初演みたいなトンチキも出来するわけなので、トウシューズと日本の文化の相性が難しいということなのかも。森山開次さんはその点やっぱり凄いんですよね、NINJAの再演、楽しみです~

 

若き日のビントレーさんの作品がやはり素晴らしかったのと、見事に踊りこなしたスター・ダンサーズ・バレエ団があっぱれだったのと、でした。