パリオペ来日公演の「マノン」、タイトルロールがミリアム・ウルド=ブラーム、デ・グリューがマチュー・ガニオ、レスコーはアンドレア・サリ、レスコーの愛人はエロイーズ・ブルドン、という4人で見てきました。ほかにムッシューGMがフロリモン・ロリュー、マダムがロール=アデライド・ブコーです。

 

「マノン」はケネス・マクミランが英国ロイヤルバレエで作った、イギリスバレエの精華のひとつなんですが、原作はフランスの古典文学。パリオペの上演には圧倒的な「ご当地感」がありました。瀟洒な美女たち、衣装の着こなし、白カツラの似合う男性たち、映画などで憧れていた時代のフランスが、そのまま目の前で繰り広げられていて、なんともいえない素敵な雰囲気でした。

 

マノンのミリアム・ウルド=ブラームさんは、5月の公演で引退、42歳の定年退職なのだそうです。デ・グリューのマチュー・ガニオさんは2歳年下。このおふたり、アクロバットな放り投げ回転リフトや持ち上げ連続とかに、反動をつけたりとか、回るパワーが、とか、そういうのがいっさい見えなかったです。いつのまにか頭上高い位置にいるマノンが、水が流れるように回転していて、どうするとこんな踊りができるのか、重要無形文化財保持者という単語が思わず浮かんでしまいました。バレエ芸術のいきつくところってこうなるんですね。若い恋をベテランの至芸で見せていました。

 

つま先が美しいマクミランでした、娼婦の群舞はキレイなつま先があっちへ行ったりこっちへ行ったりで楽しかったし、飛び交う男子たちも、乞食でもつま先がキレイに残るのでした。リアルな表現を目指して汚さもいとわない方向もあるかと思いますが、今回の美しく踊るマクミラン、はとても好き。レスコーカップルの酔っぱらいダンスもやりすぎないのがよくて爽やか、ムッシュGMなども若い美男で、どろどろ愛憎劇の雰囲気は薄かったかもでした。そこがよかったんですよね、見ながらホントにこのマノン、好きだわーと思っておりました。

 

指揮はピエール・デュムルソー、オペラもがんがん振っているそうですが、マスネのメロディーを、丁寧にふくよかに聞かせてくれました。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団も白鳥とは違う音を聞かせていて、フルートのやわらかい音や、ゆるゆるに近い演奏だったチェロのソロ(客演の方だったそうです、なるほど)など魅力いっぱいでした。パリ・オペラ座、指揮者の選択が凄いなあ。というか、通常バレエの指揮者というと専任が1人か2人で奮闘公演なことが多いのですが、パリオペは毎回違う人が来て、得意分野をまかされている印象です。

 

もともと人気のパリ・オペラ座に、最近のバレエ人気も重なって超満員の公演でした。ミリアムさんとマチューさんが見られて幸せでした🥰