神奈川県民ホール小ホールで、企画公演「オルガンavecバレエ」を見てきました。渡邊峻郁さんがゲスト出演。曲目は↓

 

第1部

『ロバーツブリッジ写本』(14世紀)よりエスタンピー・レトローヴェ
A.ヴァレンテ(ca.1520-1581):松明の踊り
M. ヴェックマン(1616-1674):第1旋法による5声の前奏曲  
J. パッヘルベル(1653-1706):カノン
J.S. バッハ(1685-1750):小フーガ  ト短調   BWV578  
G. ボヴェ(1942-):ピンクパンサーのフーガ
G. ガーシュイン(1898-1937):アイ・ゴット・リズム
J-L. フローレンツ(1947-2004):「賛歌」作品5より、第7曲 光の主

第2部

P. チャイコフスキー(1840-1893):「眠れる森の美女」より、第1幕 ワルツ
C. サン=サーンス(1835-1921):白鳥
F. メンデルスゾーン=バルトルディ(1809-1847):ソナタ 第1番より、アダージョ *
C.V. アルカン(1813-1888):《ペダルのための12の練習曲》より、第4番
C.ドビュッシー(1862-1918):牧神の午後への前奏曲
C-M. ヴィドール(1844-1937):《オルガン交響曲 第5番》より、トッカータ
 オルガン・ソロ

 

ヴァラエティに富みすぎですが、ナンバーひとつひとつの個性が際立ってつなぎもよい舞台でした。曲ごとに音色が変わって、曲間のオルガンのストップの操作もいい間合いになっていました。次の曲はどんな音がするのかしらとわくわく。有名曲も本当にセンスのいい編曲と演奏と、あと音色の設定で、いっそう魅力的に聞こえてきました。中田恵子さんはホールのオルガンアドバイザーだけあって、楽器を知りつくしているのでしょうねー、音のつぶも明確で、名手としかいえません、凄かった。

 

バレリーナは5人、「ジュンヌバレエYOKOHAMA」のメンバーで、ヒロイン格だったのは遠藤ゆまさん。初々しい魅力でしたが、動きは訓練されていて的確です、遠藤康行さんの愛弟子さんたちなのでしょうか。

 

渡邊峻郁さんはゲストダンサーとして参加。第1部、第2部とも冒頭と最後の曲で全員と登場、ガーシュインの「アイ・ガット・リズム」でソロ、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」で、遠藤ゆまさんとデュエットを踊りました。

 

14世紀の音楽から現代の音楽まで、女性を従えて踊る峻郁さんのカリスマ美にみとれました、プロポーションもお顔もなんと美しいダンサーなんでしょう、間近で見ていまさらびっくりしました。

 

バッハまでのバロックの曲は、女性の組み合わせで。客席はダンスより、音楽のファンの方のほうが多くて、いきなり?はじまった舞台のダンスをどう見たらいいのか、ちょっと戸惑っている雰囲気がありました。

 

そんな中、渡邊峻郁さんのソロの、ガーシュインの「アイ・ガット・リズム」は、みなさまに自己紹介みたいな、客席ににっこり笑いかけて、いきなりな大回転に大跳躍、緊張感がほぐれて拍手がおこりました。スターなんですよねー、カッコよくてバシバシ踊る。でもなにか、礼儀正しいのですよね、こういうのが峻郁さんなんですよね~。

 

第2部の冒頭は「眠れる森の美女」のワルツで激しく踊りました。ゆりたかが2021年に出た「Little Briar Rose」からだと思います。続いてサン=サーンスの「白鳥」を遠藤ゆまさんのソロで。瀕死の白鳥ではなくて、動きが凝っていて素敵な振付でした。オルガンのアレンジも素晴らしかったです。メンデルスゾーンのオルガン曲が期待どおり美しくて、ペダルだけのアルカンの曲は凄絶な技巧なのにウィット感がよかったです。

 

ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」 ニジンスキー以来さまざまなアプローチで踊られてきた定番。今回、遠藤康行さんのクリーンヒットというか、素晴らしかったです。遠藤ゆまさんと渡邊峻郁さんのデュエットで、音符全部使いました、という激しい動きの大ナンバーでした。この曲、静止美追求で作られることが多かったので新鮮でした。というか峻郁さん、パイプのパネルの下から、ケモノのように出てくるんですよ、きゃーでした(すいません) 最初はすぐに触れずに、後ろから様子をうかがったり、近くまで手をのばしてみたり、という、野獣感が。クライマックスはタイミングも体制もトリッキーなリフトを連発、ゆまさんもギリギリな踊りを見事にこなしていました。

 

若きゆまさんだしお嬢さんだし?で、男女の踊りとしてそのもの、の展開にはならないのですが、いや凄かったでした。劇場が黙って沸騰してましたねー、これは独立して踊っていってほしい快作かも。峻郁さんは日本に帰ってから、これだけの激しい大きなコンテンポラリーダンスは初めてではないでしょうか、こういうのが見たかったんですよね、素晴らしかった🥰

 

フィナーレは華やかに、肩乗せリフトも見せて終幕。公演を知ったとき、オルガンが主役で、軽くダンスを見せるだけなのかと思っていたのですが、がっつり展開の本格作品になっていました。峻郁さんは床に転がったり、身体をねじったり、コンテダンサーの魅力満開で、本当に見られて嬉しかったでした。先週の金の奴隷といい、なんのご褒美なんでしょう、いやーよかったです!

 

出演

中田恵子(オルガン)、遠藤康行(振付)、渡邊峻郁(ゲストダンサー)、遠藤ゆま、三宮結、田中優歩、周藤百音、斉藤真結花(バレエ)