ウクライナ国立バレエの日本初演の作品「雪の女王」を、12月26日の東京文化会館で見ました。

 

2016年初演の新作で、アニコ・レフシアシヴィリ振付、オレクシィ・バクラン音楽、台本はふたりの共同作業だそうです。音楽は既成曲を組み合わせたもの。チャイコフスキーも入っていたようですが、そのあと、2022年にロシアの作曲家をオミットして作り直しがあったとか。音楽の改訂は指揮者のミコラ・ジャジューラが、レフシアシヴィリはすでに亡くなっていたので、新しい音楽に合わせて、振付についてはできるだけ忠実に再現した、ということがアナスタシア・シェフチェンコのインタビューで語られていました。

 

ポンキエッリの時の踊りとか、カヴェレリア・ルスティカーナの序曲とか、スケーターズ・ワルツとか、超有名作品がどんどん出てきてびっくりだったのですが、事情があったためなのですね。バクラン先生の最初の選曲は、どれくらい残っていたのでしょうか。

 

アニコ・レフシアシヴィリは当時の芸術監督だそうで、女性の方なんですね。オーソドックスというか、動きとしては普通なんですが、感情やキャラクターも上手に伝わるし、テクニックの見せ場の作り方もうまいし、バレエの語り方を知り尽くした振付でした。おいくつくらいで亡くなられたのでしょうか、この路線でまた作品ができたのではないでしょうか、残念です。

 

非常時のウクライナですが、オーケストラも帯同していたのがご馳走でした。東欧系の、パワーのある人が力まずに奏でる音楽の魅力、金管楽器の音色のまろやかなこと。あまりにもなポピュラー名曲にびっくりしつつも、演奏にうっとりしました、来てくれてありがとう~。

 

カイのスハルコフさんは少年という感じではありませんでしたが、美青年をさらって行く話なら納得かも。凍ったまま踊るシーンがあって、人形ぶりで男性のテクニックを披露するのが難しそうで、さすがでした。氷の女王のシェフチェンコさんはカッコいいのひとこと🥰 クラフチェンコさんは凄テクがさりげなさすぎなほど。

 

クロウとレイヴンというカラスカップル、役名が安易ですが、のパンチェンコさんカベルコさんがいい味わいで、パンチェンコさんは小股の切れ上がった踊りで本日一番好きでした。女性山賊のテルヴァルさんも、ウネウネのびるキャラクターダンスで最強でした。

 

1幕はなんだかあっさりしてさびしかったのですが、2幕になるとフランス庭園ふうに、山賊さんに、氷の精の群舞にと、見どころ次々でとても楽しいバレエでした。主役だけが踊りまくるのではなくて、各場面で見せ場があって、十分な踊りを披露してくれるダンサーさんたちの水準もとっても高かったです。

 

平日夜のなじみのない作品とあって、入りのほうはそこそこでしたが、とても楽しい作品なので、これからも来日公演で上演してほしいです。大変な状況にあるバレエ団ですが舞台はやわらかな明るさをたたえていて美しかったです。

 

 

「雪の女王」 全2幕 12月26日のキャスト

 

雪の女王 アナスタシア・シェフチェンコ

ゲルダ イローナ・クラフチェンコ

カイ ニキータ・スハルコフ

 

魔法の花園の女主人 オレシア・ヴェロトニク

クロウ(廷臣) アレクサンドラ・パンチェンコ

レイヴン(廷臣) オレクサドル・ガベルコ

山賊 カリーナ・テルヴァル  ヴォロディミール・クツーゾフ

王女 カテリーナ・ミクルーハ

王子 ダニール・パスチューク

 

ゲルダのおばあさん スヴェオラーナ・コフトゥン

トロール ミハイル・ドロボット  オレクサンドル・ガベルコ  デニス・トルチャク 

      アンドリー・スクリャーロフ  オレクサンドル・メダロヴィチ

 

指揮 セルゲイ・ゴルブニチ

演奏 ウクライナ国立歌劇場管弦楽団