新国立劇場の中劇場で、日本バレエ協会主催公演の「バレエ・クレアシオン」を見てきました。

吉崎裕哉振付「ハイランド」、宝満直也振付「でたら芽」、石井潤振付「AYRE」の3本だてでした。

 

吉崎裕哉さんの「ハイランド」、フタをあけてみたらストラヴィンスキーの「火の鳥」でした。それも、冨田勲のシンセサイザーによる編曲版によるもの。作品のイメージには手塚治虫の「火の鳥」も取り入れられているそうです。プログラムを読んだのが見たあとで、でも先に知らなくてよかったかも。

 

ディストピア戦いと再生系のダンスで、主役マヒトが中川賢さん、ジョーオーが本島美和さん。マーピープル、エンジェルス、ムーピーというグループがあって、消防士がマッチョに出てきました。戦いがあって皆が滅んで、細胞分裂でまた増えたり、みたいなある意味オーソドックスな展開ですが、振付的にとっても饒舌なのが見ていて楽しかったです。語れるぶん、ちょっと散らかった印象もありましたが、将来的に大きな作品にも取り組めそうな振付家さんと思いました。

 

本島美和さんは、今年のNHKのニューイヤー・オペラで、吉崎裕哉さんと、突然(笑)共演していたんですよね、今回の出演もその縁だとか。真紅のびろうど系の総タイツで、火の鳥というか女王というか、ポワントで立った姿が美しい~ 本島さん、今年の6月にフルオーケストラの

「火の鳥」にも出演して、半年でまったく違うふたつの火の鳥でした。

 

宝満直也さんの「でたら芽」は、背景から床まで、巨大な「紙」の舞台でした、美術は長峰麻貴さん。30分以上の抽象作品でテンションを保って、さすがでした。冒頭シーンをひとりで引き受けた少女は、佐々木三夏バレエアカデミーの宮崎二悠子さん。きりっと集中力のあって見事でしたし、足のラインがなめらかでキレイでした🥰 ひとり大柄な女性ダンサーが強く深い踊りで目をひいたのですが、プラハで踊っていた、水森彩乃さんなのかな?

 

基本「人生とは!」みたいなシリアスな雰囲気でしたが、早いシーンの群舞などは動きが面白くて魅力いっぱい。ただ、無音で宝満さん自身が女性ダンサーと踊ったデュエットは意外と平凡だったかも。

 

紙の扱いは、中から急に人が出てきたりのタイミングの絶妙さがさすが、前半、足のすれる音がすりすりしているのが雰囲気よかったです。最後はびりびりと破れていきました。泥とか砂とか、花とか今までありましたけど、こういう「紙」って珍しいかも。どうやってリハーサルするんだろう?と休憩時間に話題になっていました。

 

石井潤さんの「AYRE」は、8年前に亡くなられた石井さんの作品を、寺田みさこさんが指導して上演したもの。音楽がオズバルド・ゴリホフで、アルゼンチンの作曲家ですが、ロシア出身。歌は何語だったんでしょうか。

 

さすらう民の厳しい生活を見せる作品で、辛く重いテーマですが、具象の表現がうまく踊りに昇華していました。新国立劇場初期のころに、石井潤さんのオリジナル作品がいくつもあるのですが、やはり再演を考えるべきなのでは。亡くなった振付家の作品を上演するのは難しい場合が多いそうですが、寺田みさこさんの手腕があれば大丈夫そうです。ダンサーたちのテクニックもスゴツヨでした。

 

充実したトリプル・ビルだったのですが、みんな死んでしまったみたいに倒れていて、ひとりがふと顔をあげる、という描写が3本ともありまして、ずっと辛い雰囲気のまま、なにか変わり種がひとつあってもよかったですよね。