11月19日の日曜日、滋賀県のびわ湖ホールでJ.シュトラウスII世の「こうもり」を見てきました。プロジェクトとしては、「全国共同制作オペラ」というものなのだそうですが、実質、指揮の阪哲郎さんのびわ湖ホール芸術監督として、最初の新制作といえる公演だったのではないでしょうか。演出は野村萬斎さん、オペラ初演出だそうです。

 

オペレッタなのでセリフもあります。日本を舞台に書き換えた物語の台本は、野村萬斎さんの書下ろし。歯切れのよい江戸弁にした、とおっしゃっていたようですが、登場人物がぽんぽんと口から先で騒ぎになるのが、非情に面白かったです。歌はドイツ語でした。前口上の桂米團治さんがそのへんを説明してくれて観客も納得してスタートしました。字幕もそこでご挨拶「字幕です!よろしくお願いします!」と登場して、公演最初の爆笑は字幕がもっていってました🥰 場面にあわせて工夫されていて、かわいい字幕だったです。

 

米團治さんは出囃子で、2幕のオルロフスキー公爵は雅楽で登場したんですが、どっちもソデで生演奏だったような? 贅沢なことです~

 

阪哲郎さん指揮の日本センチュリー交響楽団で、さすが阪さんの十八番、でもオーソドックスとは遠い、新鮮で色鮮やかな演奏。あおりますよねー、お芝居の展開に笑って、歌は間違いなく観客をのっけて走っていきます。盛り上がりすぎて疲れましたわ。

 

のれんに「福」の大店、福はこうもり=福聚からとったのかしら、アイゼンシュタインの福井敬さんの福だったりして。幸田浩子さんのアデーレは木綿のザ女中な着物、もめごとの原因になるガウンは黄金の半纏、あつらえる夕ご飯はうな重で違和感なかったです。ロザリンデの森谷真理さんは豪華なお着物で、こっくりした色合いを着こなして、谷崎潤一郎のヒロインみたいでした。

 

陰謀の黒幕ファルケ博士は大西宇宙さんだったのですが、歌以上に演技で大活躍でした。大西さんが出るのにファルケじゃ見せ場もないなと実は残念に思っていたんですが、萬斎演出はファルケが主役、舞台上でとても目立って活かされていました。あと、大西さん、舞台姿がとてもキレイになって、動きもよかったのですが、途中で鮮やかなピケターンを展開していて目を疑いました(笑) バレエの訓練をされているのでしょうか、マントをきれいにさばいていたのはその成果かも。

 

大西さんの相棒というか、いつも共演してる?藤木大地さんがオルロフスキー公爵。衣冠束帯、なのかな、着こなしもよくお似合いでした。皇族の方は和装の正装は羽織袴じゃなくこっちだ、と聞いたことがあるような。で、オルロフスキーをオフロスキー、と言い間違えるギャグがあったんですが、萬斎さんはNHKの夕方の子ども番組「にほんごであそぼ」に出ていたので詳しいんだと思いますが、幼児番組のキャラクターは普通知らないです。私はよく知ってましたけど。藤木さんはそんな姿💦でも、アンニュイな青年貴族のムードがあるのでした。

 

歌は達者なメンバーばかりで間違いないのですが、萬斎演出でそれぞれのキャラクターがしっかりわかって、演技の充実度はケタ違い。歌うあいだの振付にもスキがなくて、すみずみまで目が行き届いて鮮やかでした。

 

歌の圧巻はやはり、森谷ロザリンデのチャールダーシュ。阪さんの自在な指揮でこれでもか!でした凄かった~。森谷さんは浮気の証拠をつきつけるのも、めーにはいらぬかあ、と大見得をしてみせて、「もりや!」の大向こうがかかってました。

 

このこうもり、東京公演もあるのですが新国立劇場バレエ団と重なってしまったのでびわ湖に遠征しました。新演出のプレミエで、どこにもネタばれのない初日を観られて、出かけた甲斐がありました。

 

堪能しましたが、阪さんの指揮ももっとたっぷり聞きたいかも、来年森谷さんと薔薇の騎士が…。