金森穣さんが東京バレエ団で創作した「かぐや姫」全3幕世界初演の初日を観てきました。

 

2021年に第1幕を披露、つづいて第2幕、足かけ3年で全3幕を完成するという、異例のプロジェクトでした。今年ゴールデンウィークに発表された2幕を見そこなったのですが、上演時期が新国のシェイクスピア・ダブルビルとかぶっていたんですね、無理でしたわ。

 

初演時の第1幕はとにかく、衣装装置のコンセプトがかなりトンチキというか、着物ミニスカートに団地みたいな竹取の翁のおうちと、つっこみどころ満載。踊りが頭に入ってこなかったのですが、その2年後に作られた第2幕は見違えるほどよかった、と聞いていました。

 

全幕完成披露にあたって、第1幕の装置衣装は完全リニューアル。冒頭の竹の群舞、「緑の精」の衣装についていたナゾの葉っぱひらひらがとれてすっきり。障子にチェストがそなわっていた竹取の翁の住まいも、白いシンプルなパネルだけに代わっていました。衣装も普通のタイツ系で、着物感はほぼナシになりました、よかったです😢 

 

初見の2幕と3幕は宮中が舞台なので安心。というか、1幕から2幕創作までに大幅見直しがあったのか、抽象装置に衣装もシンプルに。ナゾ日本民話ワールドは撤廃されました。

 

皆さんおっしゃってますが、最初に聞いたとき異例で驚いた、1幕ずつ時間をおいて作っていくという企画、これが今回よかったのではないでしょうか。金森さんはいつも、20人くらいのNoismで創作をしていて、大規模バレエ団への振付は初めてだったそうで、1幕ずつ試演していく形で、バレエ団の大人数にも、空間の大きさにもなじんでいく余裕ができたのでは。初演1幕のミニキモノの不評にも対応して、まったく変えるというフィードバックも可能でした。

 

音楽は全体がドビュッシー、ピアノソロ、カルテット、管弦楽と、録音を使用しているので、ちょっと脈略なくて、せめてピアノ曲を管弦楽に編曲して使うとか、など思ったのですが、「月の光」は、ピアノとオーケストラバージョンを使い分けていて、なるほどと。でも、録音の年代もきっと違うものが並んでしまっていて、なにか工夫がほしいところでした。

 

秋山瑛さんが純白のかぐや姫にぴったり。プリマバレリーナとして、こんな作品を一から作れて恵まれていますよね~ クラシカルな美しさに、かしいだり丸まったりな動きもとても雄弁で素敵でした。柄本弾さんも踊りの安定感とやさしさと、ホントの実力をはじめて知りました(ごめん) 影姫の沖香菜子さんと、前は苦手だったおふたりがなんとよかったことか~。

 

帝の大塚卓さんは、金森さんの男ミューズなのかもしれません。このキャラクターが成立しただけでも「かぐや姫」は成功作ですよね~ 宮廷パートは華麗で男子大活躍なナンバーもあったり、エンタテインメントでした。

 

Noismは最近になってちょこちょこ見だしただけ、なのですが、金森穣さんの創作と、新人の多いダンサーさんとにちょっと限界というか、なにか突破口なものを見せてほしいなと思っていましたので、「かぐや姫」は金森さんの実力と、新しい一面を引き出したすばらしい企画と思いました。斎藤友佳理監督の、時間をかけてじっくりと一本作り上げるという作戦が見事に当たりましたね~

 

男子がイキイキ踊っているのを見て、うらやましいなーと思ったりもしたのですが、東バの全幕創作は、「M」以来30年ぶりだとか、そうなのか~やっぱり大変なのですね。でも、古典の読み替えよりも、チャレンジしてほしいです。そういう意味でもとても心おどる舞台でした。