G.F.ヘンデルのオペラ「ジュリオ・チェーザレ」 10月11日にオペラ・シティのタケミツホールで見てきました。鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパン、セミ・ステージ形式の上演。

 

2022年の3月に、濱田芳通指揮のアントネッロで、2022年の10月に新国立劇場で、1年たっておとなりのオペラシティで、わりとレアなオペラのはずなのに1年半で3公演も、ブームなのかな?

 

今回はさすがBCJ、歌い手も豪華ゲストで、カウンターテナーのティム・ミードさんのタイトルロールからもう、ありがたやな大名唱。きらめく装飾音が歌の繰り返しのたびに重ねられていって、バロック、カストラートのオペラの魅力とはこういうものなのかと。

 

新国のチェーザレだったマリアンネ・ベアーテ・キーラントさんのコーネリアと、やはりお二人が歌の主力でしたが、各役のみなさんとても素晴らしかったでした。

 

BCJのバロック・オペラで今まで見たのは「ポッペアの戴冠」と「リナルド」 どちらもコンサートよりというか、衣装ももちよりのドレスや黒の上下にそれらしい布をまいたり、と手作り感あふれていましたが、今回は豪華衣装を新調していてびっくり。やっぱり今までは余興みたいに見えちゃったりして気になっていたんですよね、ヴィジュアル的にも楽しめてよかったでした。

 

オーケストラが舞台上にいるセミ・ステージ形式は節約系ではありますが、BCJの名手たちと歌手たちのセッションも楽しく、普通の舞台より見ていて楽しい部分が多いかも。異例だったのは、上手と下手にチェンバロをすえて、指揮の鈴木優人さんの手もとにも弾き振り用の1台。チェンバロは大事なパートのわりに、オケだと音が消えてしまうことが多くて、マイクが入ってるかな?なケースもあったりと悩ましいポイントなのですが、音量2倍、ときに3倍、こんなウルトラ解決法があったとは。バロックオペラでこんなにチェンバロの存在感があったのははじめてでした。というか離れた2台のチェンバロに、テオルボやリュートなどの大通奏低音軍団がイキぴったりでさすがすぎでした。

 

新国のチェーザレは、モダンオケの東フィルがそのまま演奏したのですが、4人の通奏低音チームが仕立てられていて、そこでバロックオペラの面目を保っていたというか、だったのですよね。その前の、バロックオペラ初上演!のオルフェオとエウリディーチェでは、鈴木優人さんがバロック奏法を徹底して、同じ東フィルでもまったく違う音色を実現させていただけに、なんだかなあと思ったのでした。また新国でバロックオペラを手掛けてほしい、優人さんで。

 

森麻季さんのクレオパトラが、声も姿も超ぴったり!な大当たり配役🥰 BCJでおなじみの松井亜希さんがセスト役だったのですが、今まであまりオペラはなさっていなかったのでは?だんだん声が強く深く響いてきていて、美少年だし、新星誕生でした。

 

アレクサンダー・チャンスさんのトロメーオはお芝居も上手、加藤宏隆さんのクーリオは大きな歌がなくて損なパートですが、これまたお芝居上手で目だっていました。

 

大西宇宙さんと藤木大地さんは、なんかいつもいるです(笑) 大西さんは見るたびに声も存在感もマシマシで、大バリトンまっしぐら。藤木さんは新国チェーザレではトロメーオだったのですよね、ニレーノでは歌がもったいなかったですが、キラリと光るオカ〇演技でした。

 

4時間の長丁場を、精密さとドライブ感を両立した演奏で一分のスキもなく乗り切った舞台で、いや凄かったです。

 

アントネッロのチェーザレは、舞台の使いかたや衣装をきちんとそろえた点など共通点が多かったのですが、濱田芳通さんがかなり大胆に、楽器の編成や編曲にも手を入れていて、音楽全部がぎらぎらと万華鏡のようでした。比べるとBCJは上品に聞こえたかも(笑) 両方聞けてとても幸運でした。あと、アントネッロ版は彌勒忠史さんのニレーノが凄かったでしたよね、漫談シーンとか。あの破壊力はまあ、なかなか無いかと。

 

新国のチェーザレはパリ・オペラ座のプロダクションを借りてきたもので、豪華でよくできていたのですが、現代の人物がでてきていたりで、物語をナナメから読み取るような構造になっていました。でも今回は音楽がストレートに響いてきて、アリアの羅列に聞こえるようでも、それぞれの心情やドラマが伝わってきました。ヘンデル、ドラマチック😢

 

BCJ ヘンデル:ジュリオ・チェーザレ(東京)