初代国立劇場さよなら記念と銘打って行われた「文楽祭」 場所は国立劇場小劇場でしたが、チケットは「ぴあ」が一手ひきうけ、「あぜくら会」など関係なく、夏の売り出しは開始2分で売り切れました。なぜか入手に成功して、行ってきました♪

 

劇場につくと、ロビーにいきなり、技芸員さんたちが勢ぞろいしていて、パンフレットと「文楽名鑑」を手わたしていただけるのでした。文楽は出演者の容姿を問わない芸能ですが、やはり舞台に立つかたがたで、紋付きハカマ姿が決まって、素敵なのですよね~ 顔の小さいイケメンから、80に手の届く方まで、わいわいと居並んでどこに誰、と焦っているうちに開演でした。サインをする和生さんのお姿はちゃんと確認しました。

 

第一幕は、本公演でもやっていた菅原の「車曳の段」 梅王丸玉男、桜丸和生、松王丸勘十郎という豪華版。三味線は清介さんに、切語りせいぞろい、なはずですが千歳太夫欠席だったもよう。こういうのお好きじゃないのでしょうか。

 

休憩をはさんで座談会、山川静夫さんの司会に、咲太夫、清治、團七の大御所と、和生勘十郎玉男の人形三人組。人形三人組ははじっこのベンチにちんまり並んで座ってお客さん状態で、お話の中心は大御所トリオ。山川アナウンサーもそちらのほうを中心にしていて、時おり話をふられた人形チームがなんだかぼーっとしていておかしかったです。

 

山川アナウンサーは「綱太夫四季」などの著書もありますし、簑助さんとは大親友。いちど病気をされて言葉が使いにくくなったそうですが、90歳とおっしゃる昨日ははつらつと司会をされていました。

 

座談会の最後は、お園の人形で「うしろぶり」を、女方はめったにない玉男さんが主で、左が勘十郎さん、足が和生さんで見せる、という豪華瞬間芸でした。人間国宝トリオですが、同期生のほっこりムードがよかったでした。

 

ふたたび休憩、ここで錣太夫にサインをもらうというラッキーが。丹念でキレイな楷書のサインでした。

 

最後は目玉の「天地会」 これも前日まで上演していた「寺子屋」を、太夫、三味線、人形がそれぞれいつもと違うポジションで演じるというものです。慣れないワザで奮闘するのを、微苦笑で見守るものなのかなと予想していましたが、幕開け、勘十郎さんと玉佳さんが三味線をかまえて、緊張のあまり挙動不審になっている様子だけで大爆笑。スタートの太夫のメインをつとめた宗助さんににらまれながら(笑)奮闘する勘十郎さんの姿に、一気に盛り上がりました。

 

文楽では太夫さんと三味線さんが、いまのところ年に一回開く「蝙蝠会」というのがありまして、太夫と三味線を入れ替えて素浄瑠璃を聞かせる趣向です。三味線さんは中身を知り尽くして当たり前ですし、声に恵まれた方はとても上手に語ります。宗助さん、清介さん、燕三あたりはエース級。一方三味線は呂勢太夫さんだよりで、昨日も9割演奏してました。難しいんですね、太棹。

 

太夫は入れかわり立ちかわりで29人(笑)登場。この人が出た、恥ずかしそうにひっこんだ、なだけで見ものというか拍手と笑いがたえませんでした。三味線さんがつとめる太夫はわりとマトモなのですが、人形遣いさんの太夫は超棒読みな方がいたり、ひらき直ってウケをねらったり。長めに座っていたら足が辛くなっていたのも人形遣いさんで、そういえば舞台で正座する機会がないですもんね。

 

三味線は9名、みなさんホントにちょっとずつ弾いてすぐにひっこんで、あとは全部呂勢さんで、大曲なのにいろんな人がいろんなことをやってる床をひきいて、大変そうすぎでしたがきっちり好演されていました。

 

人形は太夫さんと三味線さんがつとめましたが、左と足遣いは頭巾ナシの本業の人形さんがつとめて、完全崩壊を防ぐ体制がとられていました。人形サポートも必死そうでしたが、かいしゃくさんが様々な珍事に対応しながら走り回っていて、そこも見どころというかおかしかったです。

 

配役表に和生さんがいないなと思っていたら、いろは送りの千代の左に入られて、主づかいの錣太夫をサポート、というか和生さんずっと口が動いていて、指示だしまくりだったようです。ラストの松王丸には、呂太夫の左に玉男さんが入って、和生玉男で舞台をしめくくりました。

 

カーテンコールは勘十郎さんのしきりで、大阪締めを。うーちましょ、もひとつせ、というあれです、関東人には憧れなので、参加できて感激でした。

 

帰りもロビーで皆さまがお見送りに出てこられていて、興奮の文楽祭も無事終了。疑問だらけの国立劇場閉場ですが、こんなイベントが見られたのはそのおかげでしょうか。でもね~