国立劇場、国立能楽堂、国立文楽劇場、国立劇場おきなわ、新国立劇場、6館のあとひとつはどこだろうとかなり考えてしまいましたが、国立演芸場でした。敷地が同じでも別勘定なんですね。

 

 

幕があくと竹本葵太夫さんのお姿が。人間国宝ですが研修生だったのですね。舞踊のための所作台がしつらえてあったので、他の演目はどうするのか悩んでしまったのですが、まわり舞台で所作台の面とそうじゃない面を使い分けられていました。

 

歌舞伎→演劇→能楽→大衆芸能→組踊→バレエ→文楽→オペラ→歌舞伎 の順番でそれぞれの演目が披露されて、休憩なしの1時間45分でした。見比べることによってそれぞれのジャンルの入門編にもなる、よい企画でした。

 

大衆芸能は「太神楽と寄席囃子」だったのですが、鏡味味千代さんがあでやかな姿で、アゴに棒がのってお茶碗がのってという信じられない技巧の数々、初めて見てただただびっくりしました。技がきまるとおめでたいのだそうでありがたかったです。

 

もうひとつ、初めて見たのが沖縄の「組踊」で、音楽も踊りも抑えた静かなやりとり、でも情緒があふれるようで心惹かれました。着物の踊りなのですが、手の角度や身体のひねり方に、タイなどのアジアの舞踊を思わせるところがあって、それがとても色気があって美しかったです。

 

能楽は居囃子、太鼓の桜井均さんがかっこよかったです。夜の部は狂言で、ここだけ昼夜別演目でした。

 

バレエは貝川鐵夫さんの「ロマンス」が上演されました。岸谷沙七優さん、松宮里々子さん、山内優奈さん、菅沼沙希さん、根本真菜美さんの5人、コンテンポラリー・ダンスはとりつきにくいのではと心配でしたが、若さと激しさもある表現力で客席を魅了していました。華やかなトウ・シューズを見せてくれてもよさそうですが、舞台面的に無理だったのかな? 

 

新国立劇場からは演劇とオペラも出演していたのですが、舞台の立ち方という点でいえば、鍛えられたバレエが一歩リードかなと思ってしまいました。この5人のなかで、今新国立劇場バレエ団で踊っているのは岸谷さんおひとりなのですよね。研修所公演などで期待していた方もいたので、見ていて少々複雑でした。これからも実力を発揮できる機会に恵まれてほしいです。

 

演劇は朗読劇「ひめゆり」だったのですが、セリフの言い方に申し訳ないのですが非常に違和感がありまして、精いっぱいなアイウエオ発声っていまどきどうなのでしょう。オペラの「椿姫」も、サロンの遊び人たちのやりとりがあららというか気恥ずかしいものが。種谷典子さんは先日の二期会の椿姫も歌った安定感でしたが、コーラスは人数不足な響きでした。

 

文楽は研修生じゃなかった人のほうがいまや少数派なのでは、知ってる方ばっかり。勘彌さんの太夫と蓑二朗さんの才蔵がなぜかいちゃいちゃしていてかわいかったです。床は大劇場で舞台後方の位置でやや迫力不足、そういえば同じ日に内子座の文楽と、大阪では素浄瑠璃の会もあって、文楽は3か所同時公演だったのでした。

 

この日の大劇場は、来月の「妹背山婦女庭訓」にあわせてか、仮花道がありまして、「椿姫」のアルフレードは仮花道を出てきました。フィナーレは演目順に出演者たちが花道を通って舞台に並んで挨拶をしたのですが、新国立劇場組は所作台のおかれていない仮花道から登場して、うまい使い分けがされていました。

 

初代国立劇場さよなら公演は進んでいますが、入札不調で二代目国立劇場の作り手が決まっていないとか、一体どうなるんでしょう。補強や改装だけでなんとかならないのでしょうか。伝統芸能のあらゆるジャンルで研修所がになってきたものと、その成果は圧巻で、国立劇場を作った世代の情熱を感じる舞台でした。いや心配だわ~