Jewels Story 「ラフマニノフの旋律」 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで、5月21日に行われた公演を見てきました。朗読劇とダンスを融合したパフォーマンスで、新国立劇場バレエ団の木村優里・渡邊峻郁・池田理沙子・奥田花純・広瀬碧・益田裕子さんが参加されるということで、渡邊さんにつられて出かけました、なんかもう言わなくてもですが。

 

「Jewels」については、益田裕子さんや木村優里さんが活躍していて目に入っておりましたが、篠宮佑一さんが代表を務めるカンパニーで、バレエにとらわれない舞台作品を発表されています。

 

5/21  Jewels Story ラフマニノフの旋律

 

キャストは台本を手にして登場する、朗読劇のスタイルをとった、途中休憩ありの約2時間の舞台でした。衣装はクラシックなジャケットがデザインされて、皆さんすらっとしてお似合い、髪型もあわせて耽美ビジュアル系な仕立てでした。イスも使わない、白い台本を手にした人物が入れ替わりながらの、「立って本を読む」スタイルの上演なのですが、出演者は実力がしっかりして、安定した演技が見られて物足りなさはありません。

 

ラフマニノフの生い立ち、ロシアから西側に活動拠点を移した過程などはよく知りませんでした。時代に逆行したロマンチックな作風が批判されたと聞く作曲家ですが、この舞台で、チャイコフスキーとのかかわりを知ってなるほどでした。

 

バレエは、まずコンペティションで選ばれたという少女たちの「あし笛の踊り」にあわせた、かわいいけれど見ごたえのある一曲が最初のほうに入りまして、新国メンバーの登場は一幕の最後、「ピアノ協奏曲第2番」を完成させた!というところで暗転、第3楽章をまるまる使ったバレエシーンでした。衣装はシャツにパンツやワンピースという、劇中の時代衣装とは関係ない普通の感じで、テクニックは純クラシックです。

 

6人のナンバーですが、踊りの密度とスピードが相当なもので、有無を言わさずテクニックで見せきる内容。振付は主宰の篠宮佑一さんとクレジットされていました。女性4人のアンサンブルはひとりひとりのアピールも見ごたえありました。

 

唯一の男性の峻郁さんの役どころはラフマニノフとも見えますが、現代の衣装なので、作曲家の残した音楽からの自由なイメージでもあったかも。すっごく踊りまくっていました、苦悩やとまどい、哀しみの表現も入れながら、大きなカブリオルとか技巧満載でびっくりしました。最後のグランピルエットも超スピードで回りまくって大拍手でしたが、峻郁さんでこういうタイプの回り方は見たことなかったです、凄かったですわ~

 

優里さんは、1月のケガ以来最初の復帰ステージになりました。峻郁さんが探し求めるヒロインとして登場、ちょっとふっくらしたのかなと思いましたが、リハビリで筋肉をつけた感じなのかも。踊りとしては一周の回転などもありましたが、あまり激しい動きは避けた感じ。そのぶん峻郁さんが跳んで回ってだったのかもしれません。

 

久しぶりにゆりたかコンビを見ましたが、溶け合うようなというか、ふたつの流れてきた水がそのまま一致するのを見るようなデュエットで、さらに素晴らしくなっていました。復帰に感慨深かったであろう優里さんに、ひたすら嬉しそうな峻郁さんと、舞台に愛と幸せがあふれていました。優里さんの足に負担をかけないかわりに?難度の高いリフトがたくさん入っていてそれも見ごたえでした。

 

休憩後2幕に入ると、ロシア革命から激動の時代になり、お芝居も迫力がありました。陳内将さんのラフマニノフがさりげない動きやセリフまわしで年齢を表現していて巧く、朗読劇でも歴史の流れがちゃんと感じられました。北村健人さんも立ち姿が美しく、激しいお芝居も説得力あります。

 

妻役の怜美うららさん、ただのよい人になってしまう役どころですが、知性を感じる芯のある女性ぶりで素敵だったです。怜美さん、宝塚時代とても好きな娘役さんだったのですが、今回活躍が見られてよかったでした。相変わらずの美貌に、ハイヒールのおみ足も大変キレイでした🥰

 

バレエ2曲目は「パガニーニの主題による変奏曲」で、女性4人がずっと縦一列になったままの踊りも面白かったですし、ゆりたかの大きなリフトにライラックの映像がかぶって、拍手が起こる感動シーンになっていました。この曲、そもそもパガニーニがモトネタだしクライマックスは定番ディエス・イレだし、ラフマニノフの旋律というのにはちょっとひっかかるところなんですが、あの有名メロディで峻郁さんがソロを踊って、たいへんよかったです。峻郁さんこちらでは凄い高速シェネを見せていまして、マクレイ先輩かと思いましたわ。

 

バレエシーンの締めは峻郁さんが優里さんを肩にのせて、だったのですが、最後の音で峻郁さんが片手を放して、2人でナナメに流し目を見せたのが斬新でした。余裕ありすぎ、カッコよかったです~

 

「ラフマニノフの旋律」どういう内容になるのかちょっぴり不安だったのですが、一回だけのパフォーマンスに「朗読劇」の制約がかえって効果があって、バレエシーンとのバランスも上手かったです。全体にヴィジュアルのレベルが高い公演でしたが、美女ぞろいの新国ダンサーズの登場、峻郁さんの今ふうな美形容姿が舞台に似合っていたのも成功の要因だったかと。

 

カーテンコールで峻郁さんの手にマイクがあって、ちょっと心配になったのですが予想どおりのグダグダ挨拶でした(笑)ただ、その場で本当に感じたことを言っていたのか、お芝居を見て踊りに反映した、というのにはその通りだったなと思いました。つづく優里さんは、ケガから戻れた喜びと、芸術と人とのかかわりと、深い内容の言葉でしめくくれて何よりでした。

 

 

あまり事前情報もなく、発表したと思ったらチケット完売でそのまま舞台が開いたので、リハーサルとかどうなっているのだろうと不思議でしたが、充実した内容でとても楽しかったです。ゆりたか復活と、峻郁さん絶好調とで、おつり以上な公演でした🥰