「ラ・エスメラルダ」、ユーリ・ブルラーカの「復元振付」で、春のバレエ協会の公演として上演されました。3公演の初日は、米沢唯さんのタイトルロールに、中家正博さんのフェビュス、木下嘉人さんのグランゴワール、玉井るいさんのフルール=ド=リという新国勢が実力発揮でした。

 

エスメラルダの全幕を見たのは初めてなんですが、今日の上演版だと第二幕の花かご群舞を使った大バレエシーンが楽しかったです。「海賊」の動く花園をほうふつするナンバーなのですが、群舞に男女ペア3組がからむ構成が入り組んで面白く、女性3人のヴァリエーションも動きが凝っていてとても素敵。玉井るいさんがメインのナンバーを見事に踊りこなしていました。

 

ヒロインの恋敵とダメ男の婚約式のスペクタクルって、「ラ・バヤデール」と同じですね、あのガムザッティのシーンも華やかですが、エスメラルダではさらにお友達のソロもくっついて大展開でした。

 

たっぷり見たなーと思うと後方の真紅のカーテンがあがって、そこには「ダイアナとアクテオン」、そういえばエスメラルダより、でした。でもあとから付け足しの踊りなのかな、ワガノワの振付で有名ですよね。こちらは宴会の余興として、ギリシャ神話の女神コスプレのこれまた群舞がついてのスペクタクル。今日は飯塚絵莉さんと牧村直紀さんでしたが、テクニック上級で気持ちよかったです。

 

と、たっぷりな踊りのあとに、ヒロインエスメラルダと二番手男子グランゴワールが、4人のジプシー娘と登場、まだこのあとにあの「エスメラルダのパ・ド・シス」があるのでした。えええと思ったのですが、ここは米沢さんがここ数年の白眉かというくらいの大当たりで、タンバリンもってがっくりしている姿がこんなに似合うとは。絶妙な力の抜きぐあい、木下さんとのやりとりも丁寧で、ソロル状態であわてる中家さんとかなでるドラマチックバレエでした。

 

木下さんが好演だったグランゴワールって、ヤクザにからまれて始末されそうになっているのを偽装結婚を条件にエスメラルダに助けてもらっている、という役どころだったんですね。パ・ド・シス、エスメラルダが恋人の裏切りを知って嘆いている、というのは知っていたのですが、じゃあ一緒に踊ってるこの男はダレ、ってずっと思っていたんです。そして全幕で見たらエスメラルダ、お話通してグランゴワールに結構冷たいです、カワイソ。

 

一幕と三幕は、お話を進める合間に適当に踊りが入る展開でそんなに面白くはないかも。しかもそんなのありか、という物語、特にこのバージョン、ユゴーの原作「ノートル=ダム・ド・パリ」と違ってハッピーエンドになっちゃう、あららという幕切れでした。フロロとカジモドももうちょっと活躍するかと思ったのですが。とはいえ、協会公演という臨時チームにしては、街の喧騒などチームワークはよかったです。

 

初演はフランス人がロンドンで行った作品ですが、ブルラーカ版はロシアバレエの栄光の香り。指導のブルラーカさんたち、帰国されてしまったのでしょうか、カーテンコールに出なかったのは、昨今の事情もあってかなあ😢

 

ロビーのモニターに、去年の協会公演の映像が流れていて、「Little Briar Rose」を見られました。あのとき凄いカメラで撮影していたのですが、とても映像がきれい。なんらかの形できちんと見られるといいなあ。木村優里さんのキュートに、渡邊峻郁さんの銀の王子もかわいい。

 

去年のコンテ作品で、は異例中の異例だったバレエ協会公演。本来はロシアバレエの影響が強い団体で、これから先はどうなるのかもちょっと心配になりました。