パトリック・デュポン追悼に、パリ・オペラ座が「白鳥の湖」の映像を期間限定で配信しました。

時間ぎれで途切れ途切れにしか見れなかった(;'∀') 過去に見ていた映像(VHSの家庭ビデオで録画)と違って美しくクリアな映像だったのですが、きっとどこかにまたチャンスが…。

 

当時舞台の映像化は特別で、デュポンのちゃんとした全幕ものってこれくらいしかないのでは。なぜピエトラとデュポンで白鳥だよーと思ったものでしたが、ドン・キホーテを残しておくより、こちらのほうがずっと価値がありました。

 

ブルメイステル版の「白鳥の湖」は、この頃わりと勢力があったバージョンでパリオペで取り入れたと聞いてもそんなに驚きませんでした。あと、当時って妙にチャイコフスキーの作曲した「原典版」の白鳥の湖全曲、が流行っていましたね。小澤征爾も録音してましたし、普通に手に入って聞くことができました。今原典版をしみじみ演奏する試みってないんじゃないかしら。

 

衣装は毛利臣男さん、ハデな衣装に驚きますが、ソ連的に尖がっていてでもちょっと古めかしいこの版にも、デュポンとピエトラガラという主演者の個性にもよく合っているのではないでしょうか。パリオペラ座はヌレエフ版「シンデレラ」が森英恵デザインですし、日本人デザイナーの活躍した時期だったんですね。

 

ピエトラガラはまだぎりぎり20代でしょうか、もっとたくましかったと思っていましたが、細くてキレイです。足ひとつ、指さきひとつが全部表現していて素晴らしい。白鳥の語る演技がはかなくて、黒鳥がカッコいいー、下品にならずにカッコいい。フェッテの横に出る足、あのぎゅうっと決まる感じがパリオペなんですよね。当時、白鳥は猫かぶってがんばるピエトラ姐さんというイメージで見てしまっていたのですが、超一流のすばらしい白鳥です。

 

ピエトラガラは日本でも人気沸騰で、個人のガラ公演も持てるほどでした。個人冠ガラ、デュポンはもちろんギエム、ルジマートフ、アナニアシヴィリと百花繚乱だったんですね、今じゃ考えられない。今見ているとNBSさんなど、個人ガラはスターが年とっていくのと追いかけっこで、ついにネタがつきた感がありますわ。ていうかバレエダンサーなのに個人ガラができる人材がどっさり出ていたあの時代が異常だったのかも。

 

デュポンは芸術監督兼任の王子だったんですね。やっぱり当時はガラにもなくーなんて言いつつ見てしまっていたのですが、ちゃんと陰りがあっていいです。パートナーとしての技量が凄い、大きなピエトラガラと組んでもアンバランスに見えないし、ホントに巧く踊らせています。

 

 

この記事で知ったのが、デュポンがカンヌ映画祭に招待されて、オペラ座のリハーサルを欠席したことで解雇されたことです。当時日本でも話題になったのかなあ、知りませんでした。もちろんネットもないし、音楽の友社の「バレエの本」はまだあったのかな、それと「ダンスマガジン」だけが情報元でした。とくにダンスマガジンはNBSさんの意向が強く、いったん離れると話題が出なくなってしまうダンサーも数多かったでした。

 

過去への旅になって懐かしかったです。でもこの頃からずーっと白鳥にドンキホーテばっかり見てますからやっぱり飽きたわ。デュポンピエトラのドンキホーテ、ボケボケの映像がネットにありましたが、あれ以上の、やりたい放題で超絶技巧、お互いが対等で意思疎通も洒落っ気も完璧!なドンキなんてもうないでしょうね。