ボリショイ・バレエの「コッペリア」NHKの録画があったのでちゃんと見てみたのですが、わたしウソを書きました。ラトマンスキーではなくて、セルゲイ・ヴィハレフ版でした。このヴィハレフ版は初演ではなく、前に作ったもののフィーリン監督時代は上演されず、久しぶりの再演だったんだそうです。

 

セルゲイ・ヴィハレフは2017年に歯医者さんの麻酔事故で突然亡くなってしまいました。まだ55歳で、現役引退後あまり活躍できなくなるダンサーも多いなか、復刻版のバレエを次々上演して引く手あまただっただけに本当にもったいなかったです。現役時代の舞台も日本でいくつか見ています。彼がオリジナル作品で日本で上演した公演は、日本のロシアバレエのファンの方たちの応援で実現したもので、私も少し寄付しました。

 

ボリショイのヴィハレフ版「コッペリア」は大体今見慣れた展開でしたが、要所要所に古雅な雰囲気と、メリハリもあって楽しかったです。見ながら、ロシアはバレエを「古典芸能」として考える一面を持っているのだなあと、そこは他の国とは違うところなんだろうなと感じました。日本の場合古典芸能は普通に劇場で上演されていますので、バレエもそういうとらえ方をするのは得意なのではないでしょうか。私は復刻版は大変好きなんですが。

 

新国立劇場バレエ団の「眠れる森の美女」はこけら落としにマリインスキーのセルゲイエフ版をやって、2014年から今のイーグリング版になっています。マリインスキーは新国にセルゲイエフ版を伝授したあと、わりとすぐにヴィハレフの復刻版を作っていて、新国から高額の上演料をぼったくって復刻版にまわしたらしいというまことしやかな噂を聞いたのですが本当だろうか。

 

その眠れる森の美女、21日マチネの王子の井澤駿さんがケガで降板して、奥村康祐さんが王子役を踊ることになりました。オーロラは木村優里さん、奥村さんとは新国立劇場では初共演でしょうか。木村さん奥村さんは3年ほど前に貝川鐵夫さんのスタジオの公演での新作「人魚姫」で主演していて、見たかたによるとこのときのお二人がとてもスイートで素敵だったそうです。

 

新国は主役級の休演がとても少なくて、初台では井澤駿さんのロメオ以来ではないでしょうか。このときはワディム・ムンタギロフさんが豪華な代役でしたが、もともと2回踊る予定を3回に増やしただけで、お相手も同じ米沢唯さんでした。それとは違って前に何度も踊っているものの、今回は王子に配役されていなかった奥村さんの登板で、木村さんとの「眠り」は初めてです。チケットが売り切れていて見るチャンスはなさそうなのですが、舞台としては興味をそそられます、休演代役という事情ですが。井澤さんはロメオの休演のときは、ひと月後の「シンデレラ」で無事復帰されています。

 

イーグリングの「眠り」は小野絢子・福岡雄大ペアの映像ソフトが出ていて見直していたのですが、一番の難所は「目覚めのパ・ド・ドゥ」でしょうか、王子のキスで目覚めた王子とオーロラが、ヴァイオリンソロのつく長い間奏曲で踊るものです。これ長いんですけど、ヌレエフ版ではこの曲で王子がソロを踊るというマラソン状態でした。イーグリング版のパ・ド・ドゥも長いですが、振付としてはそこまで悪質じゃないみたい、やっぱり次の「くるみ割り人形」がやりすぎだったのね。先日まで公開されていたくるみドキュメンタリーで吉田都監督が「がんばりすぎちゃってて」と言っていますが、手数が多すぎでとても大変そうです。もしも「くるみ」で代役ということになったら、ペアごと替えるのも考えられそう。今固定4組ですが、このあとどうして行くのでしょうかしら。