後で分かったことなんだが

事故はトラックの運転手の

居眠りが原因だったらしい。






『おーい、大丈夫か』

『早く救急車を呼べ』




現場はあっという間に大騒ぎ。



運転手は無事なんだろうかと

オレもチラッと頭をかすめた。



だけど正直、呆然としていて。





驚いた、なんてモノじゃ無い。



トラックが突っ込んだ場所は

押し潰されてぐちゃぐちゃだ。



あのまま、あの場所に居たら

オレもただでは済まなかった。



最悪のケースも考えられたんだ。





その事実にどうにも腰が抜けて


ぺたんと地べたに座り込んでた。





運転席から自力で出てきた人を

何となく視界に捉えて安堵して。




そこで瞬間的に気づいたことが。





バッと後ろを振り返ってみると


青年は既に数歩先を歩いていた。






「え、まっ、待ってキミッ」




慌てて立ち上がって引き止める。





とても信じられないことだけど、


でもこれでオレの中で確信が持てた。





青年がオレに声を掛けてきたのは


別に何か用があったワケじゃない。




何を話すでもなく立ち去ってるし、


そのことからも、それは明らかだ。





彼がオレを呼んだ理由は唯ひとつ。


オレをあそこから移動させるため。






・・・つまり彼には


こうなる事が分かっていた。





あそこにトラックが突っ込んで。



そこに居た、オレもろとも・・・







「待ってよッ、待ってくれっ」

「・・・なに?どうしたの?」





そんな小説や漫画みたいなことが

現実に起こるなんて信じられない。



だけど他に説明がつかないんだよ。




これはこのオレの身に起きた事実。






「す、少し、話をさせてくれ」






この青年には、不思議な力がある。



それだけは確かで間違いないんだ。