🔞BL妄想(S×N)














シンと一瞬、沈黙の時間。




お互いに相手の出方を


探っている僅かな時間。







「・・・はぁ・・・」





だがそれはカズの溜め息で



あっという間に打ち消された。







何を言われるのだろうかと



またしても少し身構える翔。








「・・・ねぇ。いい?

食材はあったとしてさ、

誰が作るっていうの?」






カズの、その温度のない


突き放すような言い方に



翔の体がピリッと強ばる。






思えばいつもこんな感じだ。







「その食材を使って?

誰が朝ご飯を作るの?」


「き、決まってるだろ。

俺ら二人で作るんだよ」


「・・・言っとくけど

俺は絶対に無理だから」


「ぜ、絶対って・・・」


「だって、料理なんて

全然やったことないもん」


「そんなこと言ったら

俺だってそうだよ。でも

やってみるしかないだろ」


「なんで?何のために?」


「何の・・・腹減るだろ」


「コンビニでいいでしょ。

どうしてわざわざ作るの?

スゴくめんどくさいよね」


「そうだけど・・・っ」







自分の方が歳上の筈なのに、




どんな場面で言い合っても



結局カズには勝てないのだ。







・・・いや、別に口で



負けてるって訳じゃない。






俺は歳上だから、妥協して


カズに合わせてやってるんだ。






・・・と、それが翔の



言いワケにもなっていた。








だが、それじゃ何も変わらない。





今回の同居をチャンスと捉えて


二人の間を変えていかなければ



社長の言う通り先は短いだろう。







今はまだ『Aimant』として



しっかり地盤を固める時期だ。






こんなデビューして間もない



勢いだけの、ぽっと出の新人。






『Aimant』の名が無ければ、



櫻井翔、個人としての認知など


たかが知れてると分かっている。







・・・まだ早い。





今はまだ『Aimant』を



失う訳にはいかないのだ。









「・・・なぁ、カズ。

何のため?って言うなら

『エマン』のためだよ。

俺だってこんな同居なんて

ホント冗談じゃないけどさ。

でも、俺はこの世界で

まだ上を目指したいんだ」


「・・・・・・・・」


「だから今はお前と二人、

歩いて行くしかないんだよ。

・・・頼む。俺たち二人

歩み寄る努力をしないか?」







翔は出来る限り穏やかな口調で



なんとか理解を得ようと話した。







本来この『櫻井翔』という男は



とても情に厚い兄貴肌な性格で。







櫻井翔を昔から知る人間ならば、




『優しくて面倒見が良い』


『頭が良くて頼りになる』


『嫌味がなくて真っ直ぐ』




と、口を揃えて言うのだろう。







カズを前にすると調子が狂う。







それは翔自身、



無自覚のことであった。