🔞BL妄想(S×N)










『二宮和也です』





そう言った彼の声に



ザワザワと胸が騒いだ。







無遠慮に握ってしまった手は



少しだけヒンヤリとしていて。




その感触はとても柔らかくて。






なんとなく女性の手みたいで



ドキッとした後だったからか、




翔には彼の発した声が何だか



艶っぽくも聞こえた気がした。






自分よりも小さくて華奢な体。




透き通るような肌に薄茶の瞳。






そこへ来て鼻にかかった声は



心地よく耳をくすぐっていく。







自分とは、まるで正反対の彼。



自分に無い物を全て持ってる。





翔にはカズがそんな風に見えた。










『もう一度、通してみよう』





カズと組んでデビューが決まって。



お披露目の初ライブ日が決まって。


 



どこか怖いくらいトントン拍子に



何もかもが全て上手くいっていた。






否が応でも翔の緊張度は高まって。





そして何としてもこの初ライブを



成功させてみせなければならない。




自分の人生が掛かってるのだから。






そんな思いも日々強くなっていた。










『カズ、続けていいか?』





だが、それには懸念がひとつ。







『だっ、大丈夫・・・っ』





その儚げな印象の通り、カズは



二十代の男にしては脆弱だった。







どちらかと言えば自分は体力に



自信がある方だ、と翔は思った。







『無理しなくてもいいよ。

少し休憩した方が・・・』


『だから大丈夫だってっ』


『でもお前、そんなに息

きれてたら歌えないだろ?』







自分の物差しで考えてはいけない。






ちゃんと気遣って


やらなければいけない。






相方の自分がカズのことを



守ってやらなければいけない。








翔の中でそんな庇護欲が



確かに掻き立てられていた。