※BL妄想につきご注意を。










たっぷり1分ほどそのまま

シンと静まり返ったままで。


胸のドキドキも止まらなくて。




やけに長く感じたその空気は

翔ちゃんの溜め息で変わった。



それは、覚悟を決めたような。


もしかしたら諦めたモノかな。





「・・・カズ・・・」

「は、はい・・・っ」

「先に服を着ない?」

「え・・・う、うん」



どんなことを言われるのか

凄く緊張して構えてたのに。


なんだか拍子抜けと言うか。


まあ、翔ちゃんらしいけど。




「あれ、俺の服ない?」

「あ・・・あの、多分
脱衣場じゃないかな?」

「・・・脱衣場・・・」



服を脱いで風呂場に現れて

で、着ないままオレの部屋。


もちろん『翔』の方だけど。




「じゃあリビングに集合。
で、いいかな?服を着て」

「う、うん。分かった///」



でもペースを取り戻したのか

すっかり普段通りの翔ちゃん。




開き直った、って言うよりは

やっぱり、覚悟を決めたって

感じにも見えたんだけど・・・




あれ、もしかして最悪の場合、

出てってくれ、とか言われる?



『カズを預かる資格が、
俺には無かった・・・っ』



うわ、それは考えてなかった。


でも、翔ちゃんなら有り得る。



そうなったら・・・どうしよう。







「・・・まずはもう1度、
昨夜のこと謝らせてほしい」



翔ちゃんは深々と頭を下げた。



リビングのテーブルを挟んで

2人とも正座して向き合って。


心臓が喉から飛び出しそうで。



オレは謝ったりして欲しくない。

なのに翔ちゃんはやっぱり謝る。


これは最悪もあるかもしれない。




「・・・謝らないでよ・・・」

「・・・謝るでしょ。そこは。
だって覚えてもないんだよ。俺」

「・・・そうだろうね・・・」

「本当にごめん。こんなこと
しておいて、記憶が無いなんて。
でもそれも言いワケでしかない。
・・・謝って済む問題じゃないし、
謝ったからって無かったことに
ならないのも分かってる・・・」

「・・・翔・・・ちゃん・・・」




・・・ダメだ・・・きっとこれは。


やっぱりオレは考えが甘かったんだ。



無かった事になんか出来るワケない。




だから翔ちゃんが策として選ぶのは、


「本当に。こんな俺に大事な
息子を預けてたなんて知ったら
怒るだろうね。叔母さん・・・」

「っ、で、でもっ・・・」

「言わないで。カズの気持ちは
もちろん分かってる。それでも
俺は大人だから。何があっても
カズに手を出すべきじゃなかった。
そもそも俺なんかがカズのこと
迎え入れたのが間違いだったんだ」



そう、オレと離れるって言う選択肢。




やっぱり・・・そうなるんだ・・・




オレは・・・なんてバカなんだろう。


翔ちゃんの気持ちを試すようなこと。



・・・きっとバチが当たったんだ。




もう2度と翔ちゃんに会えないのかな。





「っ、ふ・・・うっ、う・・・っ」

「・・・カズ・・・ごめん・・・」



自分のバカな、浅はかな考えにもう

どうしようも無いくらい腹が立って。


次々と溢れる涙が止まらなくなって。



こんなの翔ちゃんを困らせるだけだ。


オレは本当にどこまでも最低なんだ。





「ごめん・・・泣かないで・・・」



でもその時、翔ちゃんの腕が優しく


オレの体を包み込んでくれて・・・





「っ・・・翔・・・ちゃん・・・」

「・・・カズ・・・もういいから」



ポンポンとあやすように背中を叩く、

その手がとっても優しくて温かくて。


ぎゅうっとしがみついたら、余計に

涙がボロボロとこぼれてきちゃって。



でも翔ちゃんの指が顎に添えられて

そのままそっと上を向かされる・・・



「・・・しょうちゃん・・・」



翔ちゃんの綺麗な顔が優しく微笑む。



その美しさに見惚れてたらその顔は

そのまま、ゆっくりと近づいてきて。


オレの唇に、確かに温もりが重なった。