※BL妄想につきご注意を。









グイッと強く顎を掴まれて。


顎って言うかほっぺたごと。

唇がむにゅっととんがった。



オレを見下ろしたその顔は

やっぱりヒドくイヤらしい。



「気持ちよくシてやるよ」


片っぽだけ唇の端を上げて。


そして迫ってくる綺麗な顔。




「っ、や、やだ・・・ッ」



けど何かスゴく怖くなって。


翔ちゃんの体を突き飛ばし、

オレは全力で逃げ出してた。





「っ、カズッ!」



オレを呼ぶ声も無視して

そのまま全速力で部屋へ。


素早く鍵を閉めて、オレは

扉の前でヘタっと座り込んだ。




ドンドンドンッ



直ぐさま叩かれる扉。

ビクッと肩が上がる。




「カズッ、開けろっ」

「っ、ご、ごめんっ
もう眠くなったからっ」



この勢いでまさかドアを

ぶち破ったりしないよね。


オレはドキドキしながら

ただただ息を殺していた。



そしたら・・・



「・・・チッ」



し、し、舌打ちっ?


あの翔ちゃんがっ?



扉に耳をくっつけて

外の音を探ってると

パタンと音が聞こえた。



どうやら諦めて自分の

部屋に戻ったみたいで。


オレはホーッと息を吐いた。




・・・何だったんだろう。



今の翔ちゃんは絶対おかしい。


伯母さん家に遊びに行ったり

あとオレん家に皆んな来たり、

そうして父さんたちと一緒に

酒飲んでるのも見たことはある。


それでもあんな怖い翔ちゃんは

全然、1回も見たことがないし。




「・・・・・・・・」


酔ったから、じゃないのかな。


まさかあれが翔ちゃんの、素?

今まで隠してた本性を出した?



そ、そんな・・・


もしそうだったとしたら

明日からどうすればいいの。



『抱かせろ』


いっ、いやいや待ってよっ

心の準備が出来てないよっ



オレ翔ちゃんにならいいの?

抱かれる、ってどんな感じ?




「・・・・・・・・」



・・・どうしよう・・・っ



そんなことばかりを考えてて

眠れたのはもう夜明け近くで。



覚醒しきれない頭が何となく


ドアのノック音と誰かの声を

受け取った気がして目を開く。




コンコンコン


やっぱりそうだった。

オレの部屋のドアを叩く音だ。



「カズ?まだ寝てるの?」



その後、直ぐに聞こえた声に、

オレはベッドから飛び起きた。


途端に心臓がバクバク跳ねる。



カーテンの隙間からは眩しく、

朝の光が漏れて部屋を照らす。


そっか、もう朝になったんだ。


どうしよう、このまま部屋に

引きこもるワケにいかないし。


もしも昨夜のあの翔ちゃんが

酒のせいだったんだとしたら

さすがに酔いは覚めたろうし

出ていっても大丈夫なのかな。



え、あれが『本性』だったら?


オレは一体どうすればいいの?




「カズ?具合でも悪い?」


だけど、いつもの優しい声だし。

えい、こうなりゃイチかバチかっ


もしダメだったら逃げればいい。



「カズっ、ああ良かった。
全然起きてこないから心配
してたんだよ?どうしたの」


覚悟を決めてドアを開けたら

心配そうな顔をした翔ちゃん。


いつも通りに・・・見えるけど。




「・・・ごめんね。あの、
昨夜なかなか寝られなくて」

「ああ、なんだぁ。そっか。
具合が悪いとかじゃないね?」

「うん。心配かけてごめん」

「何でもないならいいんだ。
俺が心配かけたからだよね?
カズ多分、疲れてたんでしょ」

「ううん。たまたま、だから。
翔ちゃんのせいじゃないよ?」

「ふふ。カズは優しい子だね」




オレの頭の上にポンポンと乗る手。


やっぱりいつもと同じ翔ちゃんだ。




・・・はぁ、良かったぁ。