【注】こちらBL表現があります。

苦手な方はUターンをm(_ _)m











物音を立てないように。



足音を立てないように。





オレはそっと中に入る。







そこに金糸雀の・・・





いや『先生』の姿は無い。






でも鍵が開いてるという事は



もうこっちに居ると言う事だ。





おそらく奥の施術スペースに。









カタカタ・・・



・・・コトン






耳を澄ませると何となく



何かの音は聞こえてくる。




やっぱり居る、奥の個室に。









「・・・・・・・」





しばらく声も出さずに



ジッ、とその時を待つ。






目が見えているのなら、



先生が金糸雀であるなら、





オレの姿を見て驚くとか



何かしら反応があるハズだ。








どのくらいそうしていたか、



漸くパタンと扉の音がした。







(っ、来る・・・!)






ギュッと拳を握り、視線は



奥の、個室へ続く空間へ。






そして、ついに先生が・・・










(・・・あれ、何で?)







さぁ、どんな反応が来るか



と、身構えていたってのに。






・・・リアクションなし。









(えっ、ウソだろ・・・)






目が見えてないのが演技なら、



こんな状況は想定外のハズで


普通ならそりゃあ驚くと思う。





なのにピクリとも反応しない。




こんなの演技で出来るものか?








・・・しかも今日の先生は




タートルネックのシャツだっ




これじゃ『痕』が見えないっ









(くそ・・・そう来たか)






さあ、どうするんだ、櫻井翔。




相手が上手過ぎて万策尽きた。







こうなりゃ強引に抱き締めて、



で、熱いキスをお見舞いして。







とろとろに蕩けさせて



そこで吐かせるしか・・・









「誰か・・・います?」






オレがそんな事を考えてると、




突然、ピタリと足を止めて



そんな言葉を放った金糸雀。







いや、今は先生か。




ややこしいな全く。








「あの、誰ですか?

予約の方、ですか?」







ホントは見えてるクセに。




ホントは気づいてるクセに。









「・・・俺・・・です」


「え・・・櫻井さん?」







白々しい芝居はもういいよ。





その正体を現せっ、金糸雀っ。








「っ、ぅわ・・・っ?」









オレは素早くその距離を詰めて




目の前の体を強引に抱き締めた。