【注】こちらBL表現があります。

苦手な方はUターンをm(_ _)m










車を走らせている間にも、




今日1日の先生の笑顔が


シーン毎に思い出される。





その度に溜め息をついて



消し去るように頭を振る。








「・・・まいったな」






気づいてしまった自分の想い。






肩を掴んだ時の、華奢な感覚。




1歩、間違えてたらあのまま。






オレはあのまま先生に・・・









オレの住んでいるアパートから



歩いて5分程の所にある駐車場。






もちろんアパートのすぐ傍にも


駐車場はあるんだけど、



こっちの方が少し料金が安い。









「・・・はぁ・・・」






オレの口からはまた溜め息。





いつまでも車の中に居ても


考えることは同じ、だけど



家への足取りは・・・重い。







途中にある小さな公園の中、



そこにポツンと佇むベンチ。





オレはフラフラ歩いてって



なんとなく、そこに座って。








「はは・・・。さみぃ」






寒いのは体感なのか、心か。






こんな感情のままでオレは


普通に先生に会えるのかな。





この悶々としてる気持ちを


どこかで発散しとかないと



先生にぶつけてしまいそうだ。






それで軽蔑されて、玉砕して。





で、二度と会えなくもなって



打ちひしがれる自分が浮かぶ。






・・・考えるだけで恐い。










「あらら、スゴい偶然」






頭を抱えて項垂れたその時、



オレの背後からそんな声が。






オレが振り返るよりも早く、



その、声の主が隣に座った。







「こんな所で何してんの」


「お、おまえっ、何でっ」


「んふふっ。こんばんは」







さっきまで聞いてた『声』と



あまりにも似過ぎてる『声』





だけどこっちは浮ついていて



なんて言うか『軽い』感じの。






脚にピタリと張り付いている


黒い細身のスキニーパンツと



それを半分程覆い隠している


ちょっと厚手の赤いシャツと。




その上に更に長い黒のコート。





先生のシックな物とは違って、



首には大きなフードがついてる。







・・・こいつは『金糸雀』




オレが追っている、怪盗だ。








「刑事であるオレの前に

よくも姿を現せたな金糸雀」






癖でズボンのポケットを探る。






だけど当然、今日は



手錠なんて持っていない。







「ちょっと落ち着いてよw

今日は俺、何もしてないし。

アンタも非番なんでしょ?」


「な、なんでそれを・・・」


「見ればわかるよ。だって

こんなカッコしてるんだし」


「お、おい・・・やめろよ」






金糸雀はオレの膝に乗ってきて



首元のネクタイを外し始める。








「誰かとデートだったの?

どうだった?楽しかった?」


「お前には関係ないだろ」


「えー? 妬けちゃうなぁ。

アンタが俺以外を見てると」


「ふざけんな。退けよもう」






オレは、金糸雀の手首を掴んだ。





今のオレは、機嫌が悪いんだよ。



お遊びに付き合う気分じゃない。







「うわ、荒れてるなぁw

まさか振られちゃったの?」


「っ、うるさいっ、だから

お前には関係な・・・っ!」


「ね、その人とキスした?

俺とどっちが良かったの?」







だけど・・・金糸雀の指が・・・



オレの唇を・・・なぞって・・・







この間コイツとキスをした時の、





その時のたまらない快感が



またオレの頭の中で蘇っていた。