【注】こちらBL表現があります。
苦手な方はUターンをm(_ _)m
コンサートの会場となる
建物に足を踏み入れて、
そのロビーで視線を
向けられてる事に気づく。
チラチラと見てくる者や
中には感嘆の息を漏らす者。
街の中でもそうだったけど、
ここは場所が場所なだけに
その視線も少しあからさま。
まぁ、目立つもんなぁ・・・
「少し人が多いです。
手、離さないで下さい」
「はい。分かりました」
肘の少し上に触れるその手に
オレはなんて言うか、優越感。
そう、視線を集めているのは
オレの隣の、この先生だから。
一目見てオレが抱いた感想と
皆んな同じなんだろう、多分。
そして非日常なこの空間では、
先生の姿は余計に映えていて。
そりゃ注目の的にもなるって。
それでも、ホールへと入って
席に着いてしまえばもう後は
不躾な視線など気にならない。
クラシックなんて縁がなくて
こんなコンサートも初めてで。
だけど、その大迫力の音量と
価値観が変わりそうな世界観。
とにかくただただ圧倒されて、
ただただ感動するしかなくて。
気づいたら、歓声と拍手の嵐。
まさかこんなにも素晴らしい
ものだなんて、知らなかった。
周囲がザワザワとし始める中、
オレは演奏の余韻もあってか
頭がボーッとして動けなくて。
その時、オレの手に重なった
先生の手のひらの温もり・・・
「櫻井さん大丈夫ですか」
気持ちが昂ってたんだろうな。
オレは咄嗟にその手を掴んで
離れないように、指を絡めた。
いわゆる恋人繋ぎと言うやつ。
「っ、あ、あの・・・///」
「もう少し人が引けたら
出ましょう。危ないので」
「あ、はい///そうですね」
先生は解こうとする事もせず
ただ静かに待っていてくれた。