【注】こちらBL表現があります

苦手な方はUターンをm(_ _)m











閑静な住宅街にその建物は


ポツンと佇んでいる。






オシャレな白塗りの石壁。




丸くくり抜かれた窓には



ステンドグラスみたいな


美しいガラスが嵌ってて。





周りは緑の草木に囲まれ、



入り口には煉瓦を連ねた


可愛らしい花壇があって。





温もりを感じる木製の扉。





ゆっくり押して中に入ると



直ぐ横の壁にはシンプルな


真鍮のドアベルが付いてる。






《カランコロン》





垂れ下がったチェーンを引くと



心地よい音色が軽やかに響いて。





ここに辿り着くまでにもう既に



癒されているような気もしてる。









「いらっしゃい櫻井さん」





だけど、やっぱりコレが1番だ。



この人の、この声が締めくくり。







「あ、おはようございます。

今日も宜しく御願いします」


「ふふっ。こちらへどうぞ」






少し鼻に掛かってる高めの声が



柔らかくて、甘くて、穏やかで。







「リラックスして下さいね。

少し触診していきますから」


「はい。お願いします」






この声を聞きながらこうして



横になってると眠くなりそう。





そんな勿体ないことしないけど。









ここに通うようになったのは



確か1年程前からだったかな。





念願の捜査一課に配属されて


毎日、充実していたオレが



ある日、突然「特別課」へ


移動を命じられてしまって。






その頃、巷を賑わせていたのが



『金糸雀』って言う怪盗。





オレの指導員だった先輩は



署内でもトップクラスの


それは優秀な刑事でさ、



その『特別課』の主任に


抜擢されたんだけど、



まあ、それは良いんだよ。




先輩は文句言ってたけど


上の決定だから仕方ないし。





主任なんて凄いじゃないですか





オレもそう言って称えたよ。






まさか自分まで巻き込まれる


ことになるとは、誤算だった。







『金糸雀』を追う日々に



少しづつ違和感を感じていく。





せっかく、捜査一課の刑事に


なれたっていうのに、オレは


なぜ『怪盗』を追ってるんだ。




こんなの三課の仕事じゃないか。








『もう限界だ・・・』





全くやる気が湧き出てこなくて、




ダメ元で移動を願い出てみよう。







そんな事を考えていた、ある日。





その先輩に教えられて来たのが



この『クリニック』だったんだ。