櫻井翔Birthday記念

〜【櫻宮】短編〜




※BL妄想につき閲覧注意










「櫻井っ、金糸雀だっ」

「はいっ、追いますっ」






月夜がその身を隠すように


翻るコートの先に闇が舞う。




恍惚の先にその姿を追って


この手を伸ばして触れたくて。






この感情は恋に似ている・・・









「とうとう捕まえたぞ。
年貢の納め時だ、金糸雀」





街のハズレの小さな公園で


オレはその手を捉えていた。




何か情報があったワケでも


その姿を追えてたワケでも


カンが働いたワケでもない。





ホントに、たまたま偶然に


ベンチで獲物を眺めている

この男を見つけたってだけ。





こんな事ってあるんだろうか。



今日のオレはついてるらしい。







「あらら、櫻井刑事かぁ。
ホントにしつこいんだから」

「ふん、軽口はそこまでだ。
はは。いよいよお前を牢屋に
ぶち込む時が来たって事だ」

「長い付き合いじゃないの。
ねぇ、見逃してよ。お願い」

「ふざけんな、この泥棒が」

「泥棒、って・・・やだな。
怪盗って言って欲しいよね」

「同じ事だろ。どっちでも。
人様の物を盗む事に違いはない」








ここ数年、巷を騒がせてる怪盗


その名は、金糸雀(カナリア)




オレが追うようになってから


かれこれ3年程が経っている。





いつでもターゲットと共に

その姿を煙のように消して


オレたちの目を欺いてきた。





時にかろやかな風のように。


時に大胆な魔術師のように。





だけどそれも今この時まで。





ここまでの『大物』を


このオレが捕まえたんだ。




こりゃあ『総鑑賞』ものか?







「人様のモノを盗む、か。
うん。まぁ間違ってないよ」





ガチャリと音を立てた手錠。



それをジッと見つめながら


金糸雀はそう言って笑った。





何か含みを持たせた言葉に


多少、引っかかりを感じる。






「な・・・何だよ・・・
他には別に何もないだろ」

「・・・うん、ただね?
俺が盗むのは物だけじゃ
ないんだよ、って事かな」

「も、物だけじゃない?
じゃあ他に何を盗むんだ?」

「ふふ。教えて欲しい?」

「そりゃあ、っ、うわっ」





スイッ、と近寄ってきた顔に


慌てて後ろへ下がろうとした。




だけど、金糸雀のその両手が、


手錠で繋がれてるその両手が、



オレの頭をホールドしていた。







「ちょっ、何なんだよっ」

「しー。ねぇ、櫻井刑事。
俺の目を見てて?じーっと」

「目・・・?何で・・・」






言われて直視したのが悪かった。



きっとコイツは催眠術も使う。





薄茶色の吸い込まれそうな瞳。


よく見ると肌も白くて美しい。





上唇は少し薄めで逆に下唇は

ぷくっと膨らんで柔らかそう。



ああ、顎にホクロがあるのか。



それも何だかとても色っぽい。






魅せられたように見つめてた。



時間にして、ほんの2、3秒。






そして、その次の瞬間には・・・







「む・・・っ、ん〜っ?」





ハッと気づいた時には遅かった。





オレの唇は、金糸雀のソレで


しっかりと塞がれていたんだ。