人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆえに 
もの思ふ身は
                      後鳥羽院

(ひともおし ひともうらめし あじきなく よをおもう
 ゆえに ものおもうみは)

意味・・人がいとしくもあり、また人が恨めしくも思われる。
    思うようにならないと、この世を思うゆえに、あれ
    これと物思いをする私の身は。

    平安の王朝の時代が終わり、鎌倉の武家の時代に移っ
    て行く過程の時期。政(まつりごと)を掌握しなければ
    ならない帝王の意のままにならなくなったこの時代の
    寂しさを詠んでいます。

 注・・惜し=大切で手放し難くいとおしい。いう事を聞いて
     くれる人は愛しい。
    恨めし=真底から不満でうらめしい。いう事を聞いて
     くれない人は恨めしい。
    あぢきなく=思うようにならずどうしょうもない気持。
     面白くない。
    世を思ふ=「世」は為政者にとっての治世。鎌倉幕府
     との関係を憂慮する意。

作者・・後鳥羽院=ごとばいん。1180~1239。承久の乱で隠
    岐に流される。「新古今集」の撰集を命じる。

出典・・続後撰集・1202、百人一首・99。