盤代の 浜松が枝を 引き結び 真幸くあらば 
また還り見む
               有間皇子
                 
(いわしろの はままつがえを ひきむすび まさきく
 あらば またかえりみむ)

意味・・盤代の浜松の枝を結んで「幸い」を祈って行く
    が、もし無事であった時には、再びこれを見よう。

    有間の皇子は反逆を企て捕えられ、紀伊の地に
    連行され尋問のうえ処刑されたが、この道中で
    詠んだ歌です。
    松の枝を引き結ぶのは、旅路などの無事を
    祈るまじないです。


    後の人も、この結び松を見て、悲しみの歌を残
    しています。

    盤代の 岸の松が枝 結びけむ人は 帰りてまた
         見けむかも                   (万葉集・143)

    (盤代の岸の松ヶ枝を結んで旅たった人は、無事
          に再び 帰って来てこの松を見たであろうか)

 注・・盤代=和歌山県日高郡岩代の海岸の地名
    真幸(まさき)く=無事で(命が)あったなら    

作者・・有馬皇子=ありまのみこ。~658。謀略にかかっ
    て反乱を企てたため、捕えられ絞殺された。

出典・・万葉集・141。