花ざかり 春のみ山の 明けぼのに おもひわするな
秋の夕暮
源為義
(はなざかり はるのみやまの あけぼのに おもいわするな
あきのゆうぐれ)
詞書・・東宮(皇太子)が一品宮(いっぽのみや・親王)や故
威子(こいし)中宮(皇后)の女房たちと花見をして
いる時に詠んだ歌。
意味・・花盛りの春のみ山の曙の頃にも、どうか秋の夕暮
れ時をお忘れくださいますな。
東宮や一品宮さまのお栄えにつけても、故威子中
宮さまの御ことをお忘れなさいませんように。
今の栄達も昔の人々の力添えがあったことを忘れない
でほしい、という気持を詠んでいます。
注・・東宮=皇太子。
一品宮(いっぽんのみや)=親王。
故威子中宮(こいしちゅうぐう)=故人となった威子
という名前の皇后。
注・・明けぼの=曙。枕草子の「春は曙」をさす。春は夜明
け方が一番だ。だんだん白々と明けて峰近くの空が
あかね色になるのが素晴しい。
秋の夕暮れ=秋は夕暮れが良い。はなやかな夕日、赤
く染めた山や空が素晴しい。
作者・・源為義=みなもとのためよし。1042年没。従四位陸
奥守。
出典・・後拾遺和歌集・1103。