鴨山の 岩根し枕ける 我をかも 知らにと妹が
待ちつつあらむ
柿本人麻呂
(かもやまの いわねしまける われをかも しらにといもが
まちつつあらん)
意味・・鴨山の岩を枕として横たわっている私を、そうとは知ら
ずに妻は待っていることであろうか。
鴨山の岩を枕として死のうとしている私を何も知らずに
妻は待ち続けているのだろうか。
人麻呂は妻と別れて石見の国(島根県)に国司(地方官)
として赴任していた。
題詞に「石見の国で死に臨んだ時、自ら悲しんで作った
歌」とあります。
注・・鴨山=島根県邑智(おうち)町にある山。
岩根=大きく頑丈な岩。
し枕(ま)ける=「し」は強調の助詞。「枕ける」は枕に
しているの意。
知らにと=知らずにとて。「に」は打消しの助動詞。
作者・・柿本人麻呂=かきのもとひとまろ。
出典・・万葉集・223。