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今ぞ知る 二見の浦の 蛤を 貝合とて 
おほふなりけり


              西行

(いまぞしる ふたみのうらの はまぐりを かい
 あわせ
とて おおうなりけり)


意味・・今初めて分かったことだ。都では貝合わせと
    いって、この二見の浦の蛤を合わせて遊んで
    いるということが。

 

    相当の身分の有りそうな女性達がなにかあり
    げそうに貝を拾っている。貧しい海の生活者

    ならいざ知らず、が、身分の高い人達のする

    事としてふさわしくない。はて、どうしてだ

    ろうかと思っていると、都では貝合わせの遊

    戯がありその為に拾っている、と聞いて詠ん

    だ歌です。

 注・・二見の浦=三重県伊勢市の海岸。
    貝合=蛤の貝殻に絵や歌を書き、カルタ取り

     のようにして合わせる遊び。
    おほふ=覆う・被う、かぶせる。貝合わせを
     すること。

 

作者・・西行=さいぎょう。1118~1190。鳥羽院の

    北面武士。23才で出家。

 

出典・・山家集・138。