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知りぬらむ 行き来にならす 塩津山 世にふる道は
からきものとは       
                  紫式部

 

(しりぬらん ゆききにならす しおつやま よにふるみちは
 からきものとは)

 

意味・・塩津山を行く人足よ、そなた達も人生の道はこの峠の
    ように険しいと知っているだろうに。
    
    紫式部の一行の旅の荷物を人足に持たせ、難所の塩津
    峠を越える時、人足たちが愚痴っているのを聞いて詠
    んだ歌です。

 

 注・・行き来にならす=よく行き来している。
    塩津山=滋賀県塩津の山、福井との県境の山。
    世にふる道=「ふる」は「古る(年月がたつの意)」、
     世を過ごす道、人生の道。
    からき=(塩が)辛い、険しい、厳しい。

 

作者・・紫式部=生没年未詳。1012年頃一条天皇の中宮・章子
    に仕えた。源氏物語が有名。

 

出典・・歌集「紫式部集」(ライザ・ダルビー著「紫式部物語」)