たらちめは かかれとてしも むばたまの わが黒髪を
なでずやありけむ
遍照
(たらちめは かかれとてしも むばたまの わが
くろかみを なでずやありけん)
意味・・私の母はよもやこのように出家剃髪せよと
言って、私の黒髪を撫でいつくしんだので
はなかったろうに。
詞書により、出家直後に詠んだ歌です。
出家直後の悔恨に近い複雑な心情が、母親
へのいとおしさとともに詠まれています。
注・・たらちめ=母の枕詞。母。
かかれ=斯かれ。このような。
出家=家庭生活をも捨てて仏門に入る事。
仏門では5戒とも250戒とも言われる戒
を修行して解脱への道を求める。
作者・・遍照=へんじょう。814~890。僧正。36歳
の時に出家。
出典・・後撰和歌集・1240。