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恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ
名こそ惜しけれ
                   相模

(うらみわび ほさぬそでだに あるものを こいに
 くちなん なこそおしけれ)

意味・・つれない人を恨み悲しみ、涙に濡れて乾かす
    ひまもない私の袖が、朽ちてしまおとしてい
    るのに、その上辛い評判が立って、恋のため
    私の名までが朽ちてしまうのが惜しい。

    報われぬ恋、その上によからぬ噂が立つ堪え
    難さを詠んでいます。
    涙で乾くひまもない袖が腐ってしまいそうだ
    という誇張の表現は一般的に行われていたが、
    恋に命をかえてもいいと思う、燃え上がる気
    持ちであり、その一方全く反対な、女として
    の立場を失う女ごころの深い嘆きの歌となっ
    ています。

 注・・恨みわび=(男の無情を)恨み悲しむ。
    ほさぬ袖だにあるものを=乾かすひまのない
     袖さえあるのに。「袖」は涙を拭くたもと。
     「だに」は軽いもの(朽ち易い袖)を挙げて
     重いもの(身や名)を類推させる。

作者・・相模=生没年未詳。平安時代の人。

出典・・後拾遺和歌集・815、百人一首・65。