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つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは
思はざりしを               
                   在原業平

(ついにゆく みちとはかねて ききしかど きのうきょう
 とは おもわざりしを)

意味・・死というものが人生最後の行路だとは前から
    聞かされていたのであるが、それが昨日や
    今日旅立つ道であるとは思ってもいなかった
    ことだ。

    詞書に「病して弱くなりける時よめる」とあ
    ります。死は避けられないものと分かってい
    たが、現実のこととして身近にせまり来たと
    いう嘆きを詠んだ辞世の歌です。

 注・・つひにゆく道=終にゆく道、死路の旅。

作者・・在原業平=ありわらのなりひら。825~880。

出典・・古今和歌集・861、伊勢物語125段。