花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは
わが身なりけり
藤原公経
(はなさそう あらしのにわの ゆきならで ふり ゆくものは わがみなりけり)
意味・・花をさそうように散らす嵐の吹く庭に、
雪のように桜の花が降り敷くが、降り
行くものは花吹雪ではなくて、老いて
ゆく私の身なのであった。
太政大臣までのぼりつめ、何もかも自
分の思い通りになって比類のない権勢
をふるい、栄華を極めた公経であるか
らこそ、容赦なく忍び寄る老いの嘆き
が人一倍大きい事を詠んでいます。
注・・花さそう=花をさそって散らす。
嵐=山風。
ふり=「降り」と「古り(老いる)」を
掛ける。
作者・・藤原公経=ふじわらのきんつね。1171
~1244。太政大臣。
出典・・新勅撰和歌集・1052、百人一首・96。 |