山口県北長門・青海島の日の出
人問はば 見ずとやいはむ 玉津島 かすむ入江の
春のあけぼの
藤原為氏
(ひととわば みずとやいわん たまつしま かすむ
いりえの はるのあけぼの)
意味・・人が尋ねたなら「見ませんでした」と言おうか。
この玉津島のある入江に霞のかかった春の曙の
景色を。言葉でとうていこの美しさを言い表す
ことは出来ないから。
この歌に逸話が残っています。
為氏は第二句を「見つといはん」(はい見ました
よ、と言おう)として作ったが、父の為家に見せ
ところ、「つ」の横に「す」と書いて返された
のでこう改めて歌の会に出すと、賞賛されたと
いう。
たった一字の違いで歌を大きく変えています。
注・・玉津島=紀伊の和歌の浦にあった小島。
あけぼの=曙。夜がほのぼのと明ける頃。
作者・・藤原為氏=ふじわらためうじ。1222~1286。
正二位権大納言。
出典・・続後撰和歌集(福武書店「名歌名句鑑賞辞典」)