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験なき ものを思はずは 一杯の 濁れる酒を 
飲むべくあるらし 
                大伴旅人

(しるしなき ものをおもわずば ひとつきの にごれる
 さけを のむべくあるらし)

意味・・くよくよしてもはじまらない物思いなどにふける
    よりは、いっそのこと濁り酒の一杯でも飲む方が
    よさそうだ。

    酒を讃(たた)えた歌であるが、当時作者は妻を亡
    くし悲嘆と失望にあったので、それを紛らそうと
    して詠んだ歌です。

 注・・験(しるし)なき=かいがない。効果がない。
    思はずば=思わないで。
    濁れる酒=濁り酒、糟を漉(こ)していない酒。

作者・・大伴旅人=おおとものたびと。665~731。太宰
    帥(そち)として下向、そこで妻を亡くす。大納言
    となり上京、従二位。

出典・・万葉集・338。