黄葉の 散りゆくなへに 玉梓の 使を見れば
逢ひし日思ほゆ
柿本人麻呂
(もみじばの ちりゆくなえに たまづさの つかいを
みれば あいしひおもおゆ)
意味・・紅葉がはかなく散ってゆく折りしも、文使いが
通うのを見ると、愛(いと)しい妻に逢った日の
ことがあれこれ思い出される。
妻が亡くなった後、文使いを見て、生前の楽し
かった思い出を追憶した歌です。
なお、人麻呂は亡き妻と離れて住んでいたので、
文使いに託して手紙のやり取りをしていました。
注・・黄葉の=過ぎるの枕詞。
なへに=とともに。その時に。
玉梓(たまづさ)=使者。手紙。
作者・・柿本人麻呂=かきのもとひとまろ。生没未詳。
奈良遷都(710)頃の人。舎人(とねり・官の名称)
として草壁皇子、高市皇子に仕えた。
出典・・万葉集・・209。