外に見し 真弓の岡も 君座せば 常つ御門と
待宿するかも
                舎人

 

(そとにみし まゆみのおかも きみざせば とこつ
 みかどと とのいするかも)

 

詞書・・草壁皇子が亡くなって詠んだ歌。

 

意味・・今までは縁もゆかりももない所として見過ごし
    ていた真弓の岡も、今日からは、わが皇子さま
    がいらっしゃる所なので、ここを永遠の御殿と
    してお仕え申しあげよう。

 

    草壁皇子の亡骸(なきがら)が真弓の岡に葬られ
    た時に悲しんで詠んだ歌です。


 注・・真弓の岡=草壁皇子の墓。飛鳥の佐田にあるマ
     ルコ古墳と言われている。
    常つ御門=皇子が永遠にこもる御殿の意。
    待宿(とのい)=宿直。宮中や役所に泊まって、
     勤務や警護をすること。
    草壁皇子=689年28才で没。

 

作者・・舎人=とねり。天皇や皇子のそばに仕えて、雑役
    を務める者。

 

出典・・万葉集・174。