1122

 

 

更けにけり 山の端近く 月冴えて 十市の里に

衣打つ声
                 式子内親王

(ふけにけり やまのはちかく つきさえて とおちの

 さとに ころもうつこえ)

意味・・夜が更けてしまったことだ。山の端近くに月の光が

    冷たく澄み、遠い十市の里で衣を打つ音が聞こえる。

    山の端の冴えた月の光と、遥かな十市の里の砧(き

    ぬた)の音とで、夜更けに気がついた。その情景(砧

    を打つ女性の夜なべ作業)にしみじみした思いと哀

    感を詠んでいます。

 

 注・・山の端=山の上部で空と接する部分。
    十市(とおち)=奈良県橿原(かしはら)にある十市町。
      「遠・とお」を掛けている。
    衣打つ=衣を柔らかくしたり光沢を出すため、木槌
     で布を打つ(砧・きぬた)のこと。女性の夜なべ作業
     であった。

 

作者・・式子内親王=しょくしないしんのう。1201年没。後

    白河上皇の第二皇女。高倉宮斎宮。

 

出典・・新古今和歌集・485。