世の中を 憂しと恥しと 思へども 飛び立ちかねつ
鳥にしあらねば
山上憶良
(よのなかを うしとやさしと おもえども とびたちかねつ
とりにしあらねば)
意味・・世の中をいやな所、身が細るように耐えがたいような
所と思っても、捨ててどこかに飛び去ることも出来ま
せん。私どもは所詮(しょせん)鳥ではないのだから。
現実社会の苦しみにあえぎながら、それから逃れよう
もなく、結局それに耐つつ生きざるを得ないことを悟
った時の窮極の心がとらえられています。
注・・憂し=つらい、憂鬱だ。
恥(やさ)し=身が細るように耐えがたい、肩身が狭い。
作者・・山上憶良=やまのうえのおくら。660~733。遣唐使
として渡唐。筑前守。
出典・・万葉集・893。