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家ならば 妹が手まかむ 草枕 旅に臥せる
この旅人あはれ
               聖徳太子
             
(いえならば いもがてまかむ くさまくら たびに
 こやせる このたびとあわれ)

 

意味・・家にいたならば妻の手を枕として休みもするだろうに、
    草を枕の旅に出て、こうして行き倒れに倒れてしまっ
    ている旅人よ。ああなんとあわれなことだ。

 

    「日本書紀」にも聖徳太子が行き倒れを悼む次のよう
    な長歌を詠んでいます。

 

    片岡山で、食べ物に餓えて横になっておいでになる、
    その旅人はお気の毒であることだ。親がないままに生
    まれ育ってきたのか、仕える主人はいないのか、そん
    なことはなかろうになあ。食べ物に餓えて横になって
    おいでになる。その旅人はお気の毒であることだ。

 

    (しなてなる 片岡山に 飯に餓えて 臥せる その
    旅人あはれ 親なしに 汝生りけめや さす竹の 君
    はや無き 飯に飢えて 臥せる その旅人あはれ)

 

  注・・臥(こや)せる=横になられる(尊敬語)。特に死者に対

     して用いる。

 

作者・・聖徳太子=しょうとくたいし。574~622。17条憲法
    制定、国史の編纂、大陸文化の導入に努めた。法隆寺
    ・四天王寺を建立。
 
出典・・万葉集・415。