松島
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし
色はかはらず
殷富門院大輔
(みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし
いろはかわらず)
意味・・あなたにみせたいものです。血の涙で赤く染まった
私の袖を。あの雄島の漁師の袖さえ、波に濡れに
濡れているけれど、色まで変わっていないのです。
失恋のつらさから血の涙で袖が赤く染まってしまった、
それほど深く悲しい恋であったことを詠んでいます。
本歌は源重之の「松島や雄島の磯にあさりせし海人の
袖こそかくはぬれしか」です。重之の袖は濡れただけ
だが、私の袖は濡れたうえに色まで変わってしまったと
詠んでいます。
注・・雄島=宮城県の松島湾内の島の一つ。
色はかはらず=海人(漁師)の袖の色は変わらない。
言外に、私の袖の色は、血の涙で色が変わってしまっ
たが、の意をこめています。
作者・・殷富門院大輔=いんぶもんいんのたいふ。1131~1200。
後白河天皇の皇女・殷富門院に仕える。
出典・・千載和歌集・886。百人一首・90。