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嵐吹く 三室の山の もみじ葉は 竜田の川の 
錦なりけり
                 能因法師

(あらしふく みむろのやまの もみじばは たつたの
 かわの にしきなりけり)

意味・・嵐が吹いている三室の山の紅葉の葉は、
    竜田川に散って流れ、川面は織り出された
    錦なのだった。

    古今集の「滝田川もみじ葉流れる神なびの
    三室の山にしぐれ降るらし」を念頭に置いた
    歌です。
    歌意は、竜田川に紅葉の葉が流れている、
    神奈備の三室の山に時雨が降って紅葉の葉を
    散らしているらしい。

 注・・嵐=山から吹きおろす風のこと。
    三室の山=奈良県生駒郡斑鳩(いかるが)に
     ある神南備(かんなび)山のこと。
    竜田の川=生駒郡を流れる川。
    錦なりけり=「錦」は数種の色糸で模様を
     織り出した厚地の織物。三室山の色とり
       どりの紅葉が、竜田川に浮かんで流れて
     いる景を「錦」に見立てたもの。

作者・・能因法師=のういんほうし。988~?。

出典・・後拾遺和歌集・366、百人一首・69。