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寝覚めねば 聞かぬなるらん 荻風は 吹かざらめやは
秋の夜な夜な
                            和泉式部 

(ねざめねば きかぬなるらん おぎかぜは ふか
 ざらめやは あきのよなよな)

意味・・物思いに寝ては覚めてを繰り返すこともなく、
    ぐっすり眠っているあなたには聞こえないので
    しょうか。あなたを呼ぶ私の思いをのせた荻風
    がきっと吹いているはず、秋の夜毎夜毎に・・。

    敦道(あつみち)親王との恋愛関係の始終を記した
    のが和泉式部日記です。
    敦道親王が、次のような事を言ったので返歌とし
    て読んだ歌です。
    「随分とご無沙汰してしまいましたが、どうして、
    時にはあなたの方から文を下さらないのですか?
      私などあなたの恋人の一人に数えてはもらえない
    のですね。」

 注・・寝覚め=失恋に悶々とする寝覚め。
    荻=イネ科の多年草。ススキにそっくり。
    荻風=荻の葉が風の吹くごとにたてる寂しい葉ず
     れの音。
    やは=反語の意を表す。・・だろうか、いや・・
     ではない。

作者・・和泉式部=生没年未詳。980年頃の生まれ。橘道貞
     と結婚、子式部内侍を生む。道貞の死後、為尊(
     ためたか)親王と結婚。親王の死後弟の敦道親王
     と結ばれる。敦道親王の死後藤原保昌(やすまさ)
     と結婚。

出典・・和泉式部日記。